PFAS規制対応ガイド|測定・処理・報告義務の完全対策

PFAS(有機フッ素化合物)の環境リスクが注目され、各企業には排水中のPFAS管理と規制対応が求められています。本ガイドでは、PFAS規制の基本から、効果的な測定・分析方法、適切な処理技術、報告義務への対応、そしてコスト最適化のポイントまでを徹底解説します。工場や事業所の環境管理担当者の方に向けて、法令遵守と経営メリットを両立するための実践的な対策をまとめました。自社の排水が排水基準を満たすだけでなく、コスト削減環境負荷低減も実現するポイントを押さえ、PFAS問題に万全に対応しましょう。

目次

PFAS規制の基本知識|規制物質・基準値・適用範囲・施行時期

PFAS規制の対象物質として、日本では現在「PFOS(ピーフォス)」「PFOA(ピーフォア)」「PFHxS(ピーヘキサエス)」の3種類が法規制されています。これらは難分解・蓄積性が高く健康影響が懸念されるため、国内でも規制が強化されてきました。例えば化学物質審査規制法(化審法)ではPFOS・PFOA・PFHxSを第一種特定化学物質に指定し、製造・輸入が原則禁止されています。またストックホルム条約の国内実施として、2009年にPFOS、2019年にPFOA、2022年にPFHxSの製造・使用が原則禁止となりました。つまり企業がこれら物質を新たに取り扱うこと自体が原則できなくなっています。

水環境中のPFAS基準値も設定されています。厚生労働省は2020年に水道水中のPFOS+PFOA合計50 ng/L(ナノグラム毎リットル)を暫定目標値としましたが、2025年6月の改正で水質基準として正式に50 ng/L以下が規定されました。これにより2026年4月から水道法でPFOS/PFOAの基準遵守が義務化され、水道事業者は約3か月に1回の頻度で定期検査を行い、基準超過時は給水停止や水質改善措置を講じる必要があります。環境省も公共用水域・地下水についてPFOS及びPFOA合計50 ng/Lの指針値を設定し、全国的なモニタリングを継続しています。今後はPFAS全体(数千種に及ぶ)の中で、規制対象物質がさらに拡大される可能性も指摘されています。

PFAS規制の適用範囲は多岐にわたります。製造・使用段階では化審法による規制、飲料水については水道法(水質基準)の規制、そして排出段階では水質汚濁防止法による規制があります。水質汚濁防止法では2023年の改正によりPFOSとPFOAが「指定物質」に追加され、万が一これらが事故などで環境中に流出した場合には緊急措置と行政への報告義務が課せられました。ただし現時点でPFOS/PFOAの排水基準(数値規制)は設けられておらず、指定物質としての管理(流出防止や事故時対応)が中心です。それでも企業には自主的な監視や除去対策の努力義務が期待されており、国・自治体も監視体制を強化しつつあります。以上のように、PFAS規制の施行スケジュールとしては、化審法による製造禁止(~2021年)、水質汚濁防止法の指定物質追加(2023年)、水道法基準化(2026年)という流れで段階的に強化されてきました。企業はこれらの法施行時期を踏まえ、早めに対策を講じることが求められます。

PFAS測定・分析方法|サンプリング・分析技術・精度管理・コスト

PFASの正確な測定は規制対応の出発点です。PFASはごく微量(pptレベル:1兆分の1)でも問題となるため、分析には高度な技術が必要です。まず重要なのがサンプリング(試料採取)の段階です。微量分析では採取時の僅かな汚染でも結果に影響するため、以下の点に注意します:

  • 容器・器具の選定: PFASが付着・溶出しない材質を使います。例えば新品のポリプロピレン(PP)容器を使用し、ガラス容器は避けるのが原則です(PFASがガラス表面に吸着する恐れがあるため)。容器は使用前にメタノール等で洗浄し、採取時もフタの裏などに指が触れないよう注意します。またテフロンコーティングされた器具(フッ素樹脂)はPFASそのものであるため使用禁止です。
  • 汚染の防止: サンプリング担当者はPFASフリーの手袋や器具を使用し、採取場所の大気中や他の設備由来の汚染にも留意します。現場ではブランク試料(純水など)を同条件で採取して背景汚染の有無を確認することも有効です。採取後の試料は速やかに密封し、冷暗所で保管して分析機関へ送ります。サンプル容器や器具は分析前後で適切に管理し、他の検体と接触しないようにします。

PFASの分析技術としては、高感度な機器分析が不可欠です。一般的には液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)が用いられ、PFOSやPFOAなど複数種類のPFASを同時にナノグラム単位で検出できます。分析機関ではEPA法533/537やJIS試験法など標準法に基づき、水試料中のPFASを測定します。検査では定量下限値(検出可能な最低濃度)が基準値より十分低いこと、精密さを期すための精度管理(検量線の作成、標準物質によるチェック、重複分析による再現性確認など)が重要です。PFAS分析では試料中の濃度が極めて低いため、実験室内でのクロスコンタミネーション(試料間の汚染)にも注意が払われます。分析専用の器具・容器を確保し、他の検査と共用しない、分析装置自体にも「遅延カラム」を入れて背景のPFAS汚染を除去する等、専門的な配慮が必要です。高度な分析ゆえ、基本的には信頼できる外部の環境分析機関に委託するケースが多いでしょう。

分析にかかるコストも無視できません。PFASの検査費用は分析項目数や試料数によりますが、一検体あたり数万円程度が一般的です。例えば民間検査機関の例では、PFOSおよびPFOAの水質分析(試料1リットル)に約30,800円(税込)かかります。このように高度分析には一定の費用と日数(10日前後)が必要となるため、企業は測定計画と予算立てをしておく必要があります。水道事業者等では今後3ヶ月ごとの定期測定が義務化されるため、その分の経費(分析委託費用)も見込まねばなりません。コスト削減策としては、排水経路の中で汚染源を特定しサンプル数を最小限に抑える、簡易キットでスクリーニングして必要な試料のみ精密分析に回す、といった工夫が考えられます。ただし規制報告に使うデータは公定法に準拠した信頼性の高い数値が求められるため、安易な簡易法で済ませるのは避けましょう。正確な測定データこそが対策検討の基礎になるため、計画的な測定と品質管理が重要です。

PFAS処理技術|活性炭・膜分離・高度酸化・除去効率

PFASを効果的に除去する処理技術として、従来からある「吸着」「膜分離」に加え、「高度酸化分解」といった新たな方法が検討されています。PFASは炭素-フッ素結合が極めて強く通常の下水処理では分解されにくいため、特別な対策が必要です。ここでは主な技術とその特徴、除去効率について解説します。

  • 活性炭処理(吸着法): 粒状活性炭(GAC)や粉末活性炭(PAC)を用いて水中のPFASを吸着する方法です。活性炭の細孔にPFAS分子が捉えられることで水から除去されます。特に長鎖のPFAS(炭素数が多いPFOSやPFOA)は疎水性が高く活性炭に強く吸着されるため、高い除去効果が期待できます。一方、炭素数の短いPFAS(PFBAなど)は活性炭をすり抜けやすく除去率が低下する傾向があります。また活性炭の吸着容量には限りがあるため、一定量のPFASを処理すると飽和してしまい、吸着効率が落ちてきます。そのため定期的な活性炭の交換再生が必要です。実際、水道水のPFAS対策として国内外で活性炭処理が採用されており、多くの場合、まず活性炭でPFOS・PFOAを概ね90%以上除去できます。ただし交換時期を過ぎて飽和するとPFASが再度漏出するため、モニタリングを行い適切に管理する必要があります。家庭用の浄水器でも活性炭フィルターはPFAS除去に有効とされており、逆浸透膜と並んで主要な技術です。ただし簡易な活性炭フィルターでは完全除去は難しく、より粒径の大きい粒状活性炭や接触時間を長くとれるカートリッジ式浄水器が推奨されます。
  • 膜分離(RO膜・NF膜など): 逆浸透膜(RO膜)は、極めて細かい孔を持つ膜で水分子だけを通し、汚染物質を分離する技術です。RO膜は現在知られる中で最も高性能な除去法の一つで、PFAS除去にも極めて有効とされています。厚生労働省の見解でも、「凝集沈殿やオゾン処理ではPFAS除去は期待できないが、逆浸透膜による処理が有効」とされています。研究報告によれば、RO膜処理によりPFOSを99%以上、PFOAでも92~97%除去できたとの結果があります。実際、米国などではPFAS汚染地域の飲料水対策としてROシステムが導入され、高い除去率を示しています。一方でRO膜には濃縮水(PFASを濃縮して含む廃水)が発生する問題があります。膜を通らなかったPFASは濃縮水側に残るため、この濃縮液をどう処理・処分するかが課題です。とはいえPFASを一旦分離して体積を減らせる意義は大きく、濃縮液は回収して焼却処分するなど組み合わせればリスクを低減できます。またRO膜システムの導入にはコストがかかりますが、大規模施設では活性炭よりRO膜の方が安定して高除去率を維持できるため、トータルコストで有利な場合もあります。RO膜以外にもナノろ過膜(NF膜)や限外ろ過膜(UF膜)も組み合わせて使われるケースがありますが、PFASサイズの分子を除去するにはRO程度の高い分離性能が必要です。
  • 高度酸化・分解技術: PFASは「永遠の化学物質」と呼ばれるほど分解しにくいため、活性炭や膜では捕集はできても完全な無毒化はできません。そこで、捕集したPFASを分解処理する技術も検討されています。代表的なのは熱分解(焼却)で、PFASを含む濃縮廃液や使用済み活性炭を高温炉で焼却し、フッ素を無害な形にする方法です。十分な温度と滞留時間が確保できればPFASを完全に分解できますが、通常の焼却炉では温度不足の可能性があり注意が必要です。環境省資料によれば、PFOSは850℃以上、PFOAは少なくとも1000℃以上(推奨は1100℃超)の高温で処理することが望ましいとされています。このため、PFAS含有廃棄物を処理する際は、高温焼却炉を有する産業廃棄物処理業者に委託することが重要です。また近年は高度酸化プロセス(AOP)によるPFAS分解も研究されています。例えばプラズマ処理、光触媒反応、超臨界水酸化、電気分解などでPFASの強力なC-F結合を切断する試みです。米国ではプラズマを用いてPFASを二酸化炭素とフッ化物イオンまで分解する装置の実用化報告もあります。しかしこれらはまだエネルギーコストや副生成物の課題があり、活性炭や膜のように普及した技術とは言えません。現実的には、活性炭や膜でPFASを水から取り除き、その濃縮された形を高温焼却などで最終処分するという組み合わせが現時点で確実な対策といえるでしょう。

以上のように、PFAS処理には複数のアプローチがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。除去効率の観点では、RO膜やイオン交換樹脂などの膜・樹脂技術が最も高く、次いで粒状活性炭が効果的とされています。一方、処理コストや運用面では、活性炭は比較的安価で既存設備に追加しやすい利点があり、RO膜は高度な設備投資が必要になるものの確実な除去性能が得られます。重要なのは、自社の排水特性(PFASの種類・濃度、水量など)や運用条件を踏まえ、「最適な技術を選定し、必要に応じて複数の処理法を組み合わせる」ことです。例えば低濃度大量の排水ならまず活性炭で概略除去し、残存PFASをRO膜で仕上げる、といった多段処理も考えられます。また処理プロセス導入後は維持管理が肝心です。定期的な水質モニタリングやフィルター交換・膜洗浄などを怠らず行い、処理効果を持続させましょう。PFAS対策は高度な分野ですが、適切な技術選択と運用管理によって排水中のPFASを確実に低減することが可能です。

PFAS規制の報告義務|測定頻度・報告書作成・提出手続き

PFASに関する環境規制では、定期的な測定と行政への報告が求められるケースがあります。ここでは、水道事業者など公的機関の場合と、工場・事業所など民間企業の場合に分けて、報告義務のポイントを整理します。

まず水道事業者等(飲料水供給者)に関しては、2026年4月の水道法改正によりPFOSおよびPFOAが水質基準項目に追加されます。これに伴い、水道水中のPFAS濃度について定期的な水質検査と報告が義務化されます。具体的には少なくとも3カ月に1回以上の頻度でPFOS・PFOAの水質検査を行い、その結果を所管官庁へ報告する必要があります。厚生労働省令で定められた水質基準(50 ng/L以下)を超過した場合、水道事業者には速やかな是正措置が求められます。例えば給水を停止し代替水源に切り替える、浄水処理を強化する、といった対応です。同時に自治体や保健所など関係当局への超過報告と、住民への情報提供も義務となります。このように飲料水の安全確保に関しては厳格な報告体制が敷かれるため、水道担当者は日頃から検査計画を立て、基準超過時のマニュアル整備をしておくことが重要です。

次に一般事業者(工場・施設)の場合です。現状、排水中のPFAS濃度について直接数値規制は無いものの、水質汚濁防止法でPFOS・PFOAが「指定物質」とされたことにより、企業には監視義務と事故時の報告義務が課せられています。具体的には、これら指定物質を含む化学薬品や消火剤等を扱っている事業所では、漏洩や流出事故が起きないよう保管管理を徹底しなければなりません。そして万一、タンク破損や火災による消火剤流出など緊急事態が発生しPFOS/PFOAが公共用水域へ流出した場合、ただちに応急措置を講じるとともに所轄の環境部署(都道府県知事等)へ事故発生の報告を行う義務があります。報告は電話等の緊急連絡の後、所定の様式で詳細を提出する流れです。これにより行政が汚染拡大防止や周辺住民への周知を図ることになります。事業者は平時から「指定物質取扱施設」の届出を行い、有事の対応計画を準備しておくことが求められます。

また、法令以外でも行政指導や協定に基づく自主的な測定・報告があります。例えばPFAS汚染が疑われる地域の事業所に対し、自治体が自主的な排水モニタリングと結果報告を求めるケースがあります(周辺地下水調査への協力要請など)。企業イメージやCSRの観点からも、地域の環境監視に協力し、異常検出時には速やかに公表・対策する姿勢が重要です。

報告書の作成にあたっては、測定結果のデータだけでなく、測定日時・方法、検出下限値、分析機関名など技術的な情報も記載すると信頼性が高まります。基準超過があった場合は、原因分析と講じた対策(例えば活性炭フィルター増設や排水回収措置)、再発防止策についても詳細に報告します。行政への提出手続きは、法律に基づく定期報告の場合は所定フォーマットや電子報告システムで行います。水道事業者なら各都道府県経由で環境省・厚労省へ年報告、工場排水の自主測定なら地方自治体への届け出など、ケースによって異なります。提出後も報告書の写しや測定原票は社内で保存し、監査や次回報告に備えましょう。

さらに、PRTR法(化管法)による排出量届出も念頭に置く必要があります。PFOSやPFOAは第一種指定化学物質(例:PFOSは化管法No.397)として定められており、年間取扱量が一定以上の事業所は毎年の排出量・移動量を政府へ届け出なければなりません。この報告には、大気・水域への排出推計量や産業廃棄物としての移動量などを算出して記載します。PFASは揮発しにくいので主に水への排出や廃棄物への移行として計上しますが、こうしたデータも公開されるため、きちんと把握・管理しておくことが求められます。

まとめると、PFAS対応の報告義務では (1) 定期的なモニタリングと結果報告、(2) 基準超過や異常時の迅速な届出、(3) 継続的な情報開示と当局・地域とのコミュニケーション がポイントとなります。社内体制としても、環境管理担当者がこれら報告業務を計画・実行できるようにしておきましょう。報告を怠ったり虚偽報告をすると法令違反となり、企業の信用失墜にも繋がります。PFAS問題は社会の関心も高いため、誠実かつ的確な報告対応によって「環境リスクに真摯に向き合う企業」という信頼を得ることもできるのです。

PFAS対応のコスト最適化|処理システム・運用費用・補助金活用

PFAS対策は高度な技術を要するため、「対応したいがコストが心配」という企業も多いでしょう。しかし、ポイントを押さえ工夫することでコスト最適化を図ることが可能です。ここでは、処理システム選定から運用費用の低減策、公的補助金の活用まで、費用対効果を高める視点をご紹介します。

1. 最適な処理システムの選定: 前述のとおりPFAS除去法には活性炭、RO膜、イオン交換樹脂など様々ありますが、闇雲に高性能な設備を導入すると過剰投資になる場合があります。自社排水のPFAS濃度や水量、他の汚濁物質の有無を踏まえ、「必要十分な処理性能」を持つシステムを選ぶことが重要です。例えば低濃度のPFASであればまず活性炭塔を入れて様子を見る、高濃度なら初めからRO装置を導入する、一部工程の排水だけPFASが高ければそのラインだけ処理装置を設置する、といったピンポイント対策が有効です。株式会社アクトの実績でも、各社の排水特性に合わせ薬剤・装置をオーダーメイド設計することで、法令遵守とコスト削減の両立を実現しています。実際に、ある工場では不要な全量廃棄処理をやめて専用処理装置に切り替えた結果、年間720万円だった処理コストが250万円に約65%削減されたケースもあります。このように自社に合った技術選択は大きな経済効果を生みます。

2. 処理プロセスの効率運用: 導入した設備を最大効率で運用することもコスト低減につながります。例えば活性炭塔であればブレークスルー(PFAS漏出)が起きる直前まで使い切ってから交換する、2基を直列配置して後段の交換頻度を減らす、など運用工夫で活性炭の寿命を引き延ばせます。RO膜も定期的な膜洗浄(ケミカルクリーニング)を行い透水性能を維持することで、エネルギーコスト増加を抑えつつ長期利用できます。また処理すべき排水量そのものを減らすのも有効です。例えばPFAS含有の工程廃水を他のクリーンな排水と分離して回収することで、処理対象水量を絞り込めます。これは源流対策とも言え、不要な希釈を避けて高濃度のまま少量処理する方が処理効率とコストの面で有利です。さらに、処理設備のモニタリングを強化し故障や劣化の予兆を早期発見することで、無駄な修理費や事故処理費を削減できます。日々の点検記録の蓄積が、結果的に運用コストの最適化につながります。

3. 公的補助金・支援の活用: PFAS対策には国や自治体の補助制度を利用できる場合があります。例えば東京都では全国初の試みとして、地下駐車場などに設置されたPFOS含有の泡消火薬剤を安全な薬剤に交換する費用への補助金制度を開始しました。この制度では薬剤購入・古い薬剤の処理費用の1/2(大企業)~2/3(中小企業)が補助され、上限額も大企業500万円、中小企業700万円と高額です。このようにPFAS関連設備の更新には自治体支援が受けられることがあります。また国レベルでも、環境省が2023年度補正予算で「PFAS対策推進費」を計上し、効果的な対策技術の実証事業やガイドライン作成を支援しています。直接企業への補助ではないものの、将来的に優れた技術には助成が拡大される可能性があります。さらに中小企業向けの環境対応補助金(省エネ設備導入補助など)の枠をPFAS処理装置に転用できるケースも考えられます。自治体によっては独自に水質汚染対策費を予算化しているところもありますので、ぜひ所在地の行政機関に問い合わせてみましょう。補助金の活用は初期投資負担を大きく軽減できるだけでなく、行政のお墨付きを得ることで社内稟議も通しやすくなるメリットがあります。

4. 緊急対応・外部サービスの活用: 自社設備への大規模投資を避けたい場合、必要な期間だけ外部のレンタル設備やサービスを利用する方法もあります。例えばセイスイ工業など他社の事例では、PFAS汚染が判明した現場に仮設水処理プラントを迅速に設置し、短期間で汚染水を処理するといった対応が行われています。この仮設処理設備は省スペースで搬入・設置が可能で、既存の処理場が使えない場合でも柔軟に対応できる利点があります。自社で恒久的な処理施設を持たなくても、緊急時にはこうした外部の専門業者に処理を委託することで被害を最小限に止めることができます。結果として初期投資コストを抑えつつ必要なときだけ費用を払う形になるため、コスト効率が良い場合もあります。平常時から応援契約を結んでおく、処理業者の連絡先を確保しておくなど準備しておくと安心です。

以上のように、PFAS対応には技術面と費用面のバランスを取ることが重要です。幸い、日本国内にはPFAS処理の実績を持つ専門企業や研究機関が存在し、技術も日進月歩で進化しています。コストだけにとらわれ対応を先送りにすると、万一規制強化や事故発生時にかえって巨額の損失を被るリスクがあります。逆に先手を打って効率的なシステムを導入すれば、排水処理コストを削減しながら法令順守を達成できる可能性があります。ぜひ自社の状況に合ったコスト最適化策を検討し、賢いPFAS対策を進めてください。

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