嫌気性処理技術の活用ガイド|メタン回収・省エネ・高濃度排水対応

工場や事業所の高濃度排水を効率的に処理しつつ、省エネルギーとメタン回収によるエネルギー創出を実現する方法として、「嫌気性処理」が注目されています。嫌気性処理(メタン発酵)とは、酸素を使わない嫌気環境で嫌気性微生物が排水中の有機物を分解し、メタンガスと二酸化炭素にまで分解するプロセスの総称です。メタンは天然ガスの主成分でありエネルギー源として利用可能なため、従来は処理コストと考えられていた排水をエネルギー資源化できる点が大きな魅力です。また酸素供給のための曝気が不要なため電力消費が少なく、発生する余剰汚泥も少量に抑えられることから、嫌気性処理は省エネルギー型の排水処理法として知られています。本ガイドでは、嫌気性処理の基本原理から装置の種類、高濃度排水への適用事例、メタン回収によるエネルギー利用、運転管理のポイントを分かりやすく解説します。工場排水管理の担当者の方はぜひ参考にしてください。

目次

嫌気性処理の基本原理|嫌気性微生物・メタン発酵・有機物分解のメカニズム

嫌気性処理では、多種多様な嫌気性微生物が協調して有機物を分解し、最終的にメタンガスと二酸化炭素に変換します。この一連のプロセスは一般にメタン発酵と呼ばれ、段階としては大きく (1) 高分子有機物の分解・溶解(加水分解)、(2) 酸生成菌による有機酸などの生成、(3) 酢酸生成菌による酢酸と水素への分解、(4) メタン生成菌によるメタンガス生成、というステップから成ります。例えばグルコース1分子から3分子のメタンと3分子の二酸化炭素が生じる反応式(C₆H₁₂O₆ → 3CH₄ + 3CO₂)で表されるように、排水中の有機物(炭素源)は最終的にエネルギー含有ガスであるメタンに変換されるのです。

嫌気性処理の大きな特長は、エネルギー収支が良好な点にあります。酸素を必要としないため通常の好気性処理(活性汚泥法など)に比べて電力使用量が大幅に少なくて済み、省エネにつながります。さらに、反応で生じるメタンガスをエネルギーとして回収できるため、排水処理がエネルギー生産の場にもなり得ます。また、微生物が増殖する量(汚泥生成量)が少ないため、余剰汚泥の処理・処分コストも大幅に削減できます。実際、好気性処理では除去した有機物の30~50%が汚泥として残りますが、嫌気性処理では除去有機物の約70%がメタンガスになり、汚泥化するのは10%以下にとどまります。その結果、汚泥処分費用は大幅に圧縮されます。

ただし嫌気性処理にも留意点があります。嫌気性微生物、とりわけメタン生成菌は増殖速度が遅いため、処理槽内に長時間とどめて繁殖・作用させる必要があります。また嫌気性処理水の水質(BODやCOD)は一般に好気性処理ほど低くならず、放流水の基準を満たすためには後段に好気性処理など追加の処理工程を組み合わせる必要がある点にも注意が必要です。とはいえ、高濃度の有機排水を効率良く減容・資源化できる嫌気性処理技術は、近年ますます脚光を浴びています。

嫌気性処理装置の種類|UASB・EGSB・IC・膨張床の特徴と選定

嫌気性処理を実現する反応槽には様々なタイプがありますが、代表的なものとして以下のような方式が挙げられます。それぞれの特徴と利用シーンを押さえ、排水の特性や処理目標に応じた方式を選定することが重要です。

  • UASB法(Upflow Anaerobic Sludge Blanket法):嫌気性処理技術の古典的手法です。上向流式嫌気性汚泥床とも呼ばれ、反応槽底部に蓄積した嫌気性汚泥(スラッジブランケット)を上向きに流れる排水に接触させ、有機物を分解します。嫌気性微生物が自発的に凝集して形成する粒状汚泥(グラニュール)が沈降しつつ保持されるため、汚泥濃度を高く維持できるのが特徴です。構造が比較的シンプルで運転管理も容易ですが、一段式のガス・固体・液体分離機構(セトラー)でグラニュールを留めるため、処理水中に微細な固形物が流出しやすく二次処理が必要になるケースがあります。
  • EGSB法(Expanded Granular Sludge Bed法):UASB法を改良し、高負荷処理を可能にした方式です。背の高い円筒状の反応槽を用い、内部循環ポンプ等で処理水の一部を下部に再循環させることで上向き流速を高め、汚泥床を部分的に膨張流動化させます。これにより微生物と基質の接触効率を高め、UASBの2~3倍(約30~40 kg-COD/m<sup>3</sup>・日)の高い容積負荷での処理が可能です。また槽高が高いぶん占有面積が縮小でき、設備をコンパクト化できます。EGSBではガス・液・固体分離の安定化のため多段式セトラー(GLSS)を備える場合もあり、高濃度排水でも安定した三相分離が可能です。
  • IC法(Internal Circulationリアクター):オランダPaques社が開発した、EGSB法をさらに発展させた最新型の嫌気性処理装置です。内部循環機能を有し、二段式のセトラー(上部・下部)を内蔵することでガスと汚泥の分離効率を飛躍的に高めています。下部セトラーで回収したメタンガスの上昇流(ガスリフト効果)を利用して液循環を起こし、槽内を自己循環させる仕組みです。その結果、極めて高い有機物負荷(容積負荷25~35 kg-COD/m3/日)での処理が可能となり、従来のUASBの2~3倍、好気性処理の20~30倍もの高負荷運転を実現しています。装置は縦型塔槽で、曝気槽比で設置面積1/50とも言われる省スペース設計です。例えばICリアクターでは、高濃度の食品工場排水でも高速かつ高効率に有機物を分解しバイオガス化できるため、既存設備の増強や老朽化更新にも適しています。
  • 膨張床・流動床式:担体(キャリア)を用いるタイプや、汚泥そのものを流動化させるタイプの嫌気性反応槽もあります。膨張床(EBR: Expanded Bed Reactor)や流動床(FBR: Fluidized Bed Reactor)では、砂粒や樹脂担体など微生物が付着する媒体を上向き流で部分的に浮遊させ、反応槽内に微生物を高密度に保持します。担体固定型はUASB以前から研究されてきた手法で、高濃度の嫌気性生物膜を形成することで処理効率を高めます。ただし、担体の流動制御や目詰まり防止などの観点から、実用化には高度な設計・管理が必要です。近年のグラニュール法(UASB/EGSB/IC)の普及により、担体流動床の採用例は多くありませんが、特定の排水(高濃度かつ固形分が少ない廃水など)では適用が検討されることもあります。

以上のように、嫌気性処理装置には多様なバリエーションがあります。選定にあたっては、排水中の有機物濃度(COD/BOD)や固形物量、必要な処理水質、設置スペース、初期コスト・ランニングコストなどを総合的に勘案します。一般に、比較的中程度の負荷で十分な場合やコスト重視の場合はシンプルなUASBが選ばれ、高負荷・高効率や省スペースが求められる場合はEGSBやICなどの高度処理型が検討されます。また、食品排水など油脂分が多い場合は予備処理で油分除去を行った上でUASB/EGSBを導入する、変動負荷が大きい場合はICリアクターで安定運転を図る、といった使い分けもされています。

高濃度排水への適用|食品・化学・製紙工場での嫌気性処理事例

嫌気性処理技術は、特に有機物濃度が高い産業排水に対して有効性を発揮します。実際、国内外で多くの食品工場や化学工場、製紙工場などに導入され、処理効率の向上とエネルギー回収の両立に成功してきました。ここでは業種別の適用事例や特徴を紹介します。

  • 食品産業:食品・飲料工場からの排水は、動植物油脂や糖分、タンパク質など高濃度の有機物を大量に含むのが特徴です。醸造(ビール・酒造)、清涼飲料、乳製品、食品加工、調味料・発酵食品(醤油・酢・味噌等)、製糖、製パン・製菓、水産加工など、様々な食品関連産業で嫌気性処理の導入が進んでいます。例えばビール工場では麦汁由来の高BOD排水処理にUASB法が古くから活用されており、発生したバイオガスをボイラー燃料として再利用してきました。国内では食品・飲料会社を中心に100件を超える嫌気性処理設備の導入実績があり、嫌気性処理は食品業界における標準的な高負荷排水対策技術になりつつあります。食品排水への適用ポイントとしては、油脂分や固形物によるトラブル防止のため前処理(スクリーンやグリストラップ、浮上分離等)で不要物を除去してから嫌気槽に送ること、季節変動による水温低下に対応して発酵槽の保温・加温を行うことなどが挙げられます。適切な設計・運用により、食品工場排水のCOD/BODを大幅に減らしつつ、バイオガスによるエネルギー回収で工場の燃料使用量削減やCO2排出削減にも貢献しています。
  • 化学工業:化学系工場の排水は、有機化合物を多く含むものの組成が複雑で、時に微生物にとって難分解性であったり毒性物質(溶剤、重金属、発酵阻害物質など)を含むことがあります。そのため嫌気性処理単独で対応できるケースばかりではありませんが、例えばバイオエタノール生産廃液や有機酸製造排水、食品系化学(アミノ酸や有機酸の発酵生産工程)排水など高CODの有機系排水には嫌気性処理が適用されています。実際、国内外で製薬・バイオケミカル系工場にもUASB/EGSBが導入され、有機負荷の大幅低減とエネルギー回収を両立した例があります。化学工場排水の場合、嫌気性処理を導入する目的は生産量増加に伴う排水負荷アップへの対策や、既存の老朽化した好気処理設備を高効率な嫌気性プロセスに更新するケースが多く見られます。留意点として、微生物に有害な成分(高濃度のアンモニアや硫酸塩、重金属など)が含まれる場合は、中和や希釈、段階的処理で影響を緩和する必要があります。アクトでは、必要に応じて耐毒性に優れた嫌気性菌の馴養や、栄養塩・微量元素の適切な添加などにより、化学系排水においても安定的なメタン発酵を実現するノウハウがあります。
  • 製紙・パルプ産業:製紙工場やパルプ工場からの排水は、木材や古紙由来の高濃度有機物(難分解性リグニンなど)や繊維質を含むのが特徴です。従来、このような排水は広大な曝気槽による好気性処理が一般的でしたが、近年は嫌気性処理の適用も始まっています。特に海外のパルプ工場では大量の有機排水をエネルギー回収しながら処理する目的でUASBやICリアクターが導入されており、高効率な運転例が報告されています。日本国内でも、日本製紙江津工場(亜硫酸パルプ生産)において高効率型嫌気性排水処理の実証が行われるなど、徐々に普及の動きがあります。製紙排水の場合、嫌気性処理導入の課題は水温(冬季の低温)、難分解性CODの存在、および嫌気処理後の残留BODのさらなる処理です。これらは、嫌気性処理→好気性処理の二段プロセス化や、加温・保温設備の付加、大型嫌気槽の設置スペース確保などを検討することで解決できます。メリットとしては、嫌気性プロセスを前段に置くことで後段好気処理の負荷が大幅に減り、結果として曝気動力の削減や汚泥発生量の低減につながります。また発生したメタンは工場ボイラーの燃料に活用でき、工場全体のエネルギー自給率向上に寄与します。

以上のように、嫌気性処理は食品・飲料、発酵、化学、製紙パルプなど幅広い業種で導入が進んでいます。それぞれの業種・排水ごとに細かな工夫は必要ですが、「高濃度の有機物をエネルギーに変えつつ処理負荷を下げる」というメリットは共通しています。高負荷排水にお悩みの事業者様は、ぜひ嫌気性処理技術の活用を検討してみてください。

メタン回収とエネルギー利用|バイオガス発電・熱利用・カーボンニュートラル

嫌気性処理の大きな利点の一つが、メタンガスの回収とエネルギー有効利用です。嫌気性処理で発生するガス(バイオガス)は、メタンを主成分(通常CH4約60%、CO2約40%)とする可燃性ガスであり、これをそのまま工場内で燃料として利用したり、発電機を回して電力に変換したりすることができます。以下では具体的なエネルギー利用の方法とその効果について解説します。

  • バイオガス発電(売電・自家消費):回収したメタンガスはガスエンジンやガスタービン発電機の燃料として利用でき、排水処理しながら電力を生み出すことが可能です。発電した電力は工場内の動力源に充当して電気代を削減したり、あるいは再生可能エネルギー電力として電力会社に売電することもできます。日本では再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の適用により、一定規模以上のバイオガス発電は優遇価格での売電が可能です。このため、発電規模によっては設備投資の早期回収が期待できます。例えば食品工場の嫌気性処理で生じるメタン量から、数百kW規模の発電設備を導入し年間数千万円規模の売電収入を得たケースもあります(自家利用と合わせ実質的なエネルギーコストゼロを達成)。
  • 熱利用(ボイラー燃料・蒸気回収):発生したバイオガスをボイラーで燃焼し、蒸気や温水を得て工場のプロセス熱や暖房に利用する方法です。多くの工場では蒸気ボイラーの燃料に都市ガスや重油を使用していますが、これをバイオガスに置き換えることで燃料費の削減とCO2排出削減が可能です。特に食品工場や飲料工場では蒸気の需要が大きいため、嫌気性処理によるメタンガスを社内ボイラーで燃やして蒸気を賄い、年間で数万リットルの重油相当を節減した例があります。また、発電と熱供給を組み合わせたコージェネレーション(熱電併給)システムとすることもできます。ガスエンジンで発電すると同時に、排熱を回収して温水・蒸気を得ることでエネルギー利用効率を一層高めることができます。
  • カーボンニュートラル効果:バイオガス由来のエネルギーは、しばしばカーボンニュートラルなエネルギーと呼ばれます。それは、原料となる有機物が元々大気中のCO2を固定して生成したものであり、メタンを燃焼させCO2に戻しても大気中のCO2総量を増やさないためです。例えば食品廃液や下水汚泥などバイオマス資源から生まれたメタンガスは、化石燃料と違い追加的なCO2排出を伴わないクリーンエネルギーと言えます。さらに、メタンは温室効果ガスとしてCO2の25倍以上の温室効果を持つ強力なガスです。嫌気性処理で発生したメタンを大気中に放出せず燃焼利用することで、メタンが直接大気に放たれる場合と比較して温暖化への影響を大幅に低減できます。つまり、バイオガスの回収利用は地球温暖化防止の観点から見ても非常に有意義なのです。こうした理由から、日本でもバイオガス利活用はカーボンニュートラル推進策の一つとして位置付けられており、自治体や政府の補助事業(例:バイオマス活用推進事業)による支援対象となっています。

以上のように、嫌気性処理によって得られるメタンガスは発電・熱供給・環境貢献という三拍子揃ったメリットをもたらします。排水処理コストの削減にとどまらず、自社内エネルギーの一部をまかなったり収益化できる点は、企業のSDGsやESG経営の観点からも評価されるでしょう。

嫌気性処理の運転管理|pH・温度・負荷管理・微生物制御

嫌気性処理設備を安定稼働させ、高い処理効率とメタン生成量を維持するためには、適切な運転管理とモニタリングが不可欠です。ここでは、運転上特に重要となる「pH管理」「温度管理」「負荷(有機物負荷)管理」「微生物制御」のポイントについて解説します。

  • pHの管理:嫌気性処理では反応系のpHバランスが極めて重要です。メタン生成菌は中性付近(pH6.8~7.2)で最も活発に働きますが、pHが6以下に酸性化したり8以上にアルカリ性に傾くと活性が急激に低下します。一方で、酸生成菌(発酵菌)はpH5~6付近を好むため、負荷が高すぎて有機酸が蓄積すると系が酸性側に傾き、メタン菌の働きが抑制されて一層酸性化が進むという悪循環(ホモ酵母現象)に陥ることがあります。これを防ぐため、発酵槽内のpHは常に中性域に保つよう監視・制御します。具体的には、アルカリ度(重曹など)を適切に維持し、中和剤の自動添加によりpHを安定化させます。運転管理指標として総揮発酸濃度/アルカリ度比(VA/A比)をモニターし、例えばVA/Aが0.4を超えないよう調整するといった手法も有効です(0.8以上になるとメタン生成が深刻に阻害されるとされます)。アクトの嫌気性処理システムではpH計による連続モニタリングとアルカリ添加制御が可能で、万一のpH急変にも迅速に対処できる設計になっています。
  • 温度の管理:嫌気性微生物の活性は温度に大きく左右されます。一般にメタン発酵は35℃前後の中温域で行うケースが多いですが、50~55℃の高温発酵を採用することもあります。中温域で活性を示すメタン菌と高温域で活性を示すメタン菌は菌種が異なり、それぞれ適応温度帯が限られるため、発酵槽の温度はどちらかの範囲に厳密に維持する必要があります。高温発酵は一般に反応速度が速く有機物分解効率も向上しますが、その分微生物がストレスを受けやすく、また槽の保温・加温にエネルギーを要するという課題があります。日本では冬季の外気温低下も考慮し、中温発酵(35℃帯)で年間通じて安定稼働させる例が多くなっています。しかしながら、中温域でも20℃を下回るとメタン生成速度が急激に低下します。そのため、発酵槽には断熱やヒーターコイルを設置し、特に冬場は温水やスチームで槽温を適切に保つ運転が求められます。近年では、嫌気性微生物群を徐々に低温環境に適応させ、ある程度の低温でも稼働可能とする試みも行われています。実験では20℃環境下でのメタン生成活性が、長期運転により初期の数十倍に向上したとの報告もあります。
  • 有機物負荷の管理:嫌気性処理では、投入する有機物量(COD負荷)を微生物群の処理能力に見合った範囲に収めることが大切です。負荷が高すぎると消化不良を起こし有機酸が蓄積、pH低下によるメタン生成阻害を招きます。一方、負荷が低すぎると設備能力を十分に活かせず経済性が低下します。一般に新規稼働時は徐々に負荷を上げる慣らし運転を行い、グラニュール汚泥中の微生物量と活性が十分高まってから設計負荷まで段階的に引き上げます。負荷の指標には体積負荷(kg-COD/m3・日)や、汚泥あたり負荷(kg-COD/kg-VSS・日)などが用いられます。高性能なEGSB・IC型では30kg-COD/m3・日以上の超高負荷運転も可能ですが、実際には排水の難分解性成分割合や毒性成分の有無によって許容負荷は変動します。定常運転中も流入負荷の変動に注意し、大きな生産変動時には希釈や流量調整でショック負荷を緩和する対策が重要です。また、負荷に応じて適切な栄養塩類(アンモニア態窒素やリン酸)の比率を保つことも留意点です。嫌気性菌は好気性菌に比べ増殖が遅いため必要栄養量も少なめですが、一般にはBOD:N:P=100:5:1程度(もしくはCOD: N: P=350:7:1程度)の比率があれば十分とされます。原水の栄養バランスが極端に悪い場合、必要に応じて尿素やリン酸塩で補うこともあります。アクトの提供するシステムではオンライン計測やIoTを活用し、負荷変動時の自動希釈・断続流入制御など高度な負荷管理も可能です。
  • 微生物の制御(担体・汚泥管理):嫌気性処理の主役である微生物群を健全に維持することが、性能維持の根幹です。まず、スタートアップ時には十分量の種汚泥(接種汚泥)を投入し、高活性なメタン生成菌を導入します。グラニュール状の汚泥が形成されてからは、それらが系外に流出しないよう適切な上向き流速やセトラー設計で保持します。定期的に汚泥濃度を測定し、必要であれば汚泥循環や抜泥を行って槽内の菌体量を最適化します。また、排水中に微生物へ毒性を持つ物質(殺菌剤、重金属、塩素、硫酸塩など)が含まれる場合は、事前の除去処理や希釈により影響濃度を下げておく必要があります。例えば高濃度の硫酸塩があると硫酸塩還元菌が増殖し、有毒・悪臭の硫化水素ガスが発生してしまいます。硫化水素は周辺環境への悪臭影響だけでなく、設備腐食やガスエンジンへの被害も引き起こすため、脱硫装置の設置や硫酸塩源の除去が重要です。油脂分についても、過剰に流入すると汚泥粒子に付着して浮上スカムを形成しトラブルの原因となるため、前処理で油分を除去することが推奨されます。さらに、嫌気性槽は基本的に密閉構造であるため、定期的な攪拌・循環により槽内を均質な状態に保つことや、ガス抜きによる圧力管理も行います。以上のような微生物管理を徹底することで、嫌気性処理装置は長期にわたり安定した性能を発揮します。

排水処理は「コスト」と捉えられがちですが、嫌気性処理技術を適切に活用することで「エネルギー生産の場」へと変革させることが可能です。さらに省エネやCO2削減による環境貢献は企業価値の向上にもつながります。アクトではお客様の課題解決と持続可能な事業運営の手助けとなるようこれからも商品開発に取り組んで参ります。廃液処理に関するお困りごとがある際は、是非アクトにご相談ください。

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