工場や事業所の排水処理でよく耳にする「含水率」とは何でしょうか? 本記事では、水処理の専門家が含水率の基本定義から計算方法、測定手法、業界別の管理基準、そして含水率が処理コストに与える影響までを分かりやすく解説します。さらに、含水率を低減する技術(脱水・乾燥・濃縮)や汚泥含水率の最適化手法、含水率管理によるコスト削減効果についても詳しく紹介します。汚泥の含水率にお困りの排水管理担当者の方は必見です。適切な含水率管理によって、廃棄物処分費用の大幅削減や処理効率の向上が期待できます。最後に、当社アクトの技術力による含水率改善の実績と導入事例も紹介します。
含水率の基本定義と計算方法
含水率(がんすいりつ)とは、物質(例えば汚泥)の中に含まれる水分の割合を示す指標です。通常は重量基準(湿潤重量基準)の含水率を指し、水を含んだ試料全体の重量に占める水分重量の比率を百分率(%)で表します。計算式で表すと以下の通りです:
- 含水率(%)=(湿っている試料の重量 − 乾燥させた後の重量)÷ 湿っている試料の重量 × 100
例えば、湿った汚泥試料100gを炉乾燥して30gの乾燥固形物になった場合、含水率は(100−30)/100×100=70%となります。この場合、水分が70g、固形分(乾いた汚泥)が30g含まれていることになります。
汚泥は一般に水分含有量が非常に高く、含水率80〜99%にもなると言われます。つまり汚泥の大部分は水分で占められており、重量のほとんどが水という状態です。実際、下水処理で生じる脱水汚泥でも約80%前後が水分だとされています。100kgの脱水汚泥を運ぶと、そのうちおよそ80kgは水を運んでいる計算です。含水率と逆の概念として固形率(固形物率)がありますが、これは全重量に占める乾燥固形分の割合(%=100−含水率)です。例えば含水率80%の汚泥は固形率20%(重量の20%が乾いた固形分)となります。
含水率の定義には湿潤重量基準のほかに乾燥重量基準もありますが、通常「含水率」と言えば湿潤重量基準を指します。工業や廃棄物処理の分野では上記の湿潤基準が用いられるため、本記事でもこの定義に基づいて解説します。
含水率測定方法と測定機器
汚泥など廃棄物の含水率を正確に測定するためには、試料を乾燥させて水分量を直接測る方法が一般的です。以下に代表的な測定方法と使用される機器を紹介します:
- 乾燥減量法(オーブン乾燥法):最も基本的な測定法です。汚泥試料を一定量取り、実験用乾燥炉(オーブン)に入れて105℃程度で数時間〜一晩乾燥させます。乾燥前後の重量を高精度な電子天秤で測定し、水分重量の差から含水率を算出します。この方法は結果が信頼でき、JIS規格など標準法にもなっています。ただし測定に時間がかかる点がデメリットです。
- 赤外線水分計(迅速水分測定器):赤外線加熱と内蔵電子天秤を組み合わせた装置で、少量の試料を高速に乾燥させ含水率を測定します。オーブン乾燥法に比べ短時間でおおよその含水率が分かるため、現場での迅速管理に便利です。ただし加熱条件によっては厳密な数値が多少ぶれることもあるため、正確さが要求される場合はオーブン法で再確認することが望ましいでしょう。
- その他の方法・機器:汚泥以外の分野では、電気的手法(高周波や微波を利用した水分計)や化学的手法(カールフィッシャー滴定法)もあります。しかし汚泥の場合、成分が複雑で均質でないため、簡易プローブ式の水分計などは誤差が大きくあまり実用的ではありません。現実には上記の乾燥法による測定が主流です。測定にあたっては試料が代表性あるよう十分撹拌混合して採取し、複数回測って平均を取ることで信頼性を高めます。
測定機器の選定ポイントとしては、必要な精度と迅速性、試料の量や種類を考慮します。例えば毎日の含水率管理には迅速測定器を用いて頻繁に測り、月次やトラブル時にはオーブン乾燥法で正確に測定するといった運用も考えられます。適切な測定により汚泥含水率の変動を把握することが、後述する含水率管理によるコスト削減の第一歩となります。
業界別含水率管理基準
汚泥の含水率は業界や用途によって「望ましい基準値」や法的基準が存在します。以下では廃棄物処理に関する法規制と、汚泥の種類ごとの含水率目安について解説します。
1. 廃棄物処理法上の含水率基準(85%ルール):日本の法令では、汚泥を最終処分場に埋立処分する場合含水率85%以下にしなければならないと定められています。簡単に言えば、水分を多く含んだ泥状のままでは埋立ててはならず、脱水などである程度乾燥させる必要があるということです。これは汚泥の流出防止や安定化のための基準で、産業廃棄物・一般廃棄物ともに適用されます。また、し尿処理施設から生じた汚泥についても焼却等しない場合は85%以下にすることが義務付けられています。85%を超える高含水率の汚泥は法律上「そのままでは埋立処分できない」ため、排出事業者は含水率低減を図るか、焼却や中間処理を経てから処分する必要があります。
なお「含水率85%以上だから運搬もできないのか?」という疑問がありますが、運搬自体を禁止する法律はありません。しかし含水率が高すぎる汚泥は液状に近く、輸送時に漏れ出すリスクや悪臭の問題があります。そのため実務的には脱水してケーキ状(泥団子状)に固めてから運搬・処分するのが一般的です。多くの産廃処理業者も「受け入れは含水率85%以下の脱水汚泥に限る」といった基準を設けています。以上のように85%という値が一つの指標になっており、含水率管理の目標値として意識されています。
2. 汚泥の種類と含水率の目安:汚泥は発生源や性質によって含水率の典型値が異なります。一般的な脱水後汚泥(脱水ケーキ)の含水率は約65〜85%程度と言われます。以下は代表的な汚泥種類ごとの目安です
- 下水汚泥(有機性汚泥):含水率65〜85%。有機物を70〜90%含むため腐敗しやすく、通常80%前後の水分を含んだケーキ状で排出されます。高度な脱水設備を用いれば65%程度まで下げられる場合もあります。
- し尿汚泥:含水率80〜85%。下水汚泥に比べ固形物が少なく、水分が多い傾向です。脱水しても80%前後の水分を含むケースが多く、最終処分時は焼却されることが一般的です。
- 食品工場排水汚泥(有機性):含水率80〜90%。有機物が多いため非常に水っぽく、通常の機械脱水では高含水になりがちです。悪臭や腐敗も生じやすいため、必要に応じて石灰などで含水率を下げつつ安定化(固化)させることもあります。
- 金属加工・メッキ排水汚泥(無機性):含水率40〜80%。無機スラッジは有機に比べ脱水しやすく、フィルタープレスなどを使うと含水率50%前後の固形ケーキにできる場合もあります。固形分が主に無機物(金属水酸化物等)で構成されるため腐敗の問題は少なく、セメント原料などへの再資源化が検討されることもあります。
以上のように、汚泥の種類によって適切な含水率管理基準が異なります。有機性汚泥の場合は腐敗防止のため含水率を下げて早めに処理・処分することが重要です。一方、無機性汚泥では高性能な脱水機を使いできるだけ水分を減らすことで、処分量削減や資源化の可能性を高めることがポイントになります。自社の排出する汚泥の性質に応じて、目標とすべき含水率を把握しておきましょう。
含水率が処理コストに与える影響
汚泥の含水率は処理・処分コストに直結する重要な要素です。一般的に含水率が高い(=水分が多い)ほど、汚泥処理にかかる費用が増大します。その主な理由は以下の通りです:
- (1) 廃棄物処分費用の増加:産業廃棄物として汚泥を処分する場合、多くの業者が重量または容積に応じて料金を設定しています。含水率が高い汚泥は重量・体積ともに大きくなるため、水を運んで捨てる分まで費用を支払うことになります。例えば乾燥固形分が同じ100kgでも、含水率80%の汚泥は総重量500kg、含水率60%なら総重量250kgとなり、重量ベースの処分費用は半減します(※固形分100kg、含水率80%→総重量500kg、60%→250kg)。
- (2) 運搬コストの増加:汚泥の含水率が高いとその分だけ輸送時の重量・容積がかさみ、運搬回数や燃料費が増えることになります。含水率を下げて汚泥の重量・体積を減らせば、同じサイズのコンテナでより多くの乾燥汚泥を載せられ、輸送効率が向上します。その結果、トラック台数の削減や燃料使用量削減につながり、コストダウンだけでなく温室効果ガス排出削減といった環境メリットも得られます。
- (3) エネルギーコストの増加:含水率の高い汚泥を焼却や乾燥処理する場合、水分を蒸発させるために多大な熱エネルギーが必要です。水1kgを蒸発させるには約2260kJ(540kcal)の熱量が必要であり、水分が多い汚泥ほど燃料費や電気代がかさみます。例えば焼却炉で汚泥を燃やす際、含水率が高いままだと燃焼温度が下がり補助燃料の投入が増えるため、処理コストが上昇します。環境省の指針でも「含水率85%→70%程度まで脱水できる設備へ更新することで、汚泥乾燥・焼却時の化石燃料使用量を削減可能」と報告されています。このように事前の脱水性能を上げて水分を減らすことは、エネルギーコスト削減に直結します。
以上の理由から、「汚泥の水分を減らす = お金を捨てている水を減らす」という図式になります。実際のケースでも、含水率を80%から70%に下げるだけで処理コストが約30%削減できた例があるほどです。特に運搬処分費が高騰している昨今、水分の塊を遠方まで運ぶ無駄を省く効果は大きく、含水率低減はコスト削減の重要施策となっています。
しかし一方で、含水率を下げるための処理(高度脱水や乾燥)にもコストがかかる点に留意が必要です。含水率とコストの関係はトレードオフであり、単純に「可能な限り乾燥させれば良い」というものでもありません。例えば乾燥機で10%まで水分を飛ばせば廃棄量は劇的に減りますが、そのための乾燥設備の初期投資や運転コストが巨額になる可能性があります。重要なのは、処分コスト削減効果と低減処理に要する費用のバランスを見極め、最適な含水率目標を設定することです。この点については後述する「最適化手法」の項で触れます。
含水率低減技術(脱水・乾燥・濃縮)
汚泥の含水率を下げるために用いられる主な技術には、「濃縮」「脱水」「乾燥」の3つがあります。それぞれの概要と特徴を以下に解説します。
- 濃縮(一次濃縮):汚泥中の固形物濃度を高める工程です。一般に含水率97〜99%程度の原泥(ほとんどが水)を、重力沈降や浮上分離によって水分を一部取り除き、含水率95%程度(固形分数%)まで濃縮します。下水処理場の沈殿槽や濃縮槽が典型例で、ポンプで汲み取れる半流動状の高濃度汚泥を得ます。濃縮はエネルギー消費が少なく経済的ですが、得られる汚泥はまだ水分が非常に多くこのままでは最終処分できません。あくまで後段の脱水工程を効率化するための前処理と位置付けられます。
- 脱水(二次濃縮・機械脱水):濃縮した汚泥や発生汚泥に機械的圧力や遠心力をかけて水分を搾り出す工程です。フィルタープレス、ベルトプレス、スクリュープレス、遠心脱水機など様々な汚泥脱水機が使用されます。機種により性能差はありますが、一般に含水率65〜85%程度の脱水ケーキが得られます。例えばフィルタープレスでは圧縮力が高く無機汚泥なら60%台まで低減可能な場合があり、スクリュープレス型は操作が簡単で80%前後のケーキを連続的に得るのに適しています。脱水によって体積は大幅に減少し、例えば含水率99%の泥を80%まで脱水すれば体積は1/20になります。脱水ケーキはスコップで扱える固形状になるため、運搬・埋立が容易になります。ただし有機質の多い汚泥では脱水後も約80%もの水分を含むことに留意が必要です。
- 乾燥(脱水ケーキの乾燥処理):脱水ケーキを熱風や加熱面で加熱し、水分を蒸発させてさらに乾燥固形化する工程です。乾燥機(スラッジドライヤー)を用いると、含水率を例えば10〜30%程度まで下げることができます。乾燥汚泥はほぼ固体(ペレット状や粉末状)になり、重量も劇的に減少します。例えば含水率83%・乾固形100kgの脱水ケーキ(湿重量588kg)を、含水率10%まで乾燥すると、重量は約111kgまで削減されます。乾燥汚泥はカロリーが高く燃料やセメント原料に利用可能なほか、長期保管や運搬もしやすくなります。しかし乾燥には大量のエネルギー(燃料や電力)が必要なため、コスト・環境負荷が課題です。そのため、ボイラーや焼却炉の余熱、太陽熱など未利用エネルギーを活用する工夫や、乾燥前の含水率をできるだけ下げておくことが重要です。
以上のように、「濃縮→脱水→必要に応じ乾燥」という段階的プロセスで汚泥の含水率は段階的に低減されます。多くの工場や下水処理施設ではまず機械脱水まで行い、含水率80±10%程度の脱水ケーキを得て処分・再利用するのが一般的です。さらに高度な減量化が求められる場合や、汚泥を燃料化・肥料化する場合には乾燥工程が追加されます。
また、最近では特殊な薬剤やプロセスで含水率低減を効率化する技術も開発されています。例えば汚泥に吸水性の高い粉体や凝集剤を添加して機械脱水だけで含水率50〜60%台のケーキを得る試みや、真空凍結乾燥、マイクロ波乾燥といった新技術も研究されています。
汚泥含水率の最適化手法
前章で述べたように、汚泥の含水率を下げるほど処理コストは削減できますが、そのための設備投資や運転コストとのバランスを考える必要があります。含水率の最適化とは、過不足なく適切な水分低減レベルを見極め、総合的なコストメリットと運用性を最大化することです。以下に最適化の主なポイントを解説します:
1. 薬品や前処理による脱水性向上:汚泥の種類によっては、そのままでは水分が抜けにくい場合があります。高分子凝集剤(高分子フロック剤)や無機系凝集剤を適切に添加することで、汚泥中の微細粒子や有機物を凝集させて水分を分離しやすくできます。例えば当社の無機系凝集剤「水夢(すいむ)」を用いるとフロック(汚泥粒子の塊)の強度が増し、脱水後のケーキ含水率が約50〜70%と低く安定します。薬剤費はかかりますが、脱水性能向上による廃棄量削減効果でトータルコストが下がるケースも多く報告されています。また、汚泥を加熱・加圧して構造を変化させ脱水しやすくする「熱処理(熱凝縮)」や、消化工程で固形分そのものを減量化する手法もあります。特に嫌気性消化を行うと固形物が減少し汚泥量が減る一方、消化によって脱水ケーキの含水率がやや上がる傾向もあるため、その場合は消化と脱水工程全体で最適な水分率となるよう調整します。
2. 脱水機の選定と運転パラメータ最適化:脱水工程でどの程度水を絞れるかは、使用する脱水機の種類と運転条件に左右されます。汚泥の性状に適した脱水機を選ぶことが重要です。例えば、繊維質や油分を含む汚泥にはスクリュープレス型が詰まりにくく有効、一方でより低含水を狙うならフィルタープレス型や高性能遠心脱水機が適しています。また、凝集剤の注入量、攪拌条件、圧搾圧力、処理時間などの運転パラメータを最適化することで、含水率は数%単位で改善できます。実際の運用では、試運転時に含水率目標を設定し、投入薬剤量を増減したり圧搾時間を延長したりして、最低の含水率でかつ処理量が確保できるポイントを探ります。定期的な脱水機の点検整備(ろ布の洗浄交換やスクリュー刃の更新など)も、能力維持と含水率安定化に欠かせません。
3. 乾燥工程の有無とエネルギー有効利用:含水率を飛躍的に下げるには乾燥工程の追加が効果的ですが、前述の通りコストとの兼ね合いがあります。最適化の考え方としては、「乾燥させずに済む範囲で最大限脱水する」のが基本です。どうしても乾燥が必要な場合は、ボイラー排ガスや排熱、水蒸気など工場内の未利用熱を乾燥機に活用することでエネルギーコストを抑えます。例えばある工場では、炉設備からの高温排ガスを熱交換器で利用してスラッジドライヤーを稼働させ、追加燃料を使わずに乾燥させています。このように自社のエネルギーリソースと処理要求量を照らし合わせ、経済的に見合う範囲で乾燥度合いを決めることがポイントです。
4. 含水率目標の設定:以上を踏まえ、自社汚泥に対して「経済的メリットが最大化する含水率」を設定します。例えば廃棄費用が1トンあたり○円、乾燥コストが1トン水分あたり○円という具合に試算し、脱水のみ(含水率約80%)、部分乾燥(含水率50%)、完全乾燥(含水率10%)などシナリオごとに年間コストを比較します。多くの場合、脱水機で可能な限り低含水にし、乾燥は最小限に留めるのがコスト効率面で優れています。例えば含水率80%を70%にするだけでも廃棄重量は約3割減となり、そのための追加コスト以上の削減効果が見込めるケースがほとんどです。逆に10%まで乾燥すると廃棄重量は激減しますが、乾燥コストが高すぎて全体では割に合わないこともあります。最適化とは、コストと技術のバランスを見極めた上で、その事業環境に合った含水率管理レベルを採用することです。
含水率管理によるコスト削減効果
汚泥の含水率を適切に管理することで得られるコスト削減効果を整理してみましょう。以下のような多角的なメリットがあります:
- 廃棄処分費の大幅削減:含水率低減により汚泥そのものの発生量(重量・容積)が減るため、産廃処理業者への支払い額が減少します。前述したように、例えば含水率を10ポイント下げるだけで総重量が数割減ることも珍しくありません。実際、ある食品工場では汚泥の含水率を80%台から70%前後に下げた結果、年間処理コストが約30%削減されました。このように直接的な処分費カット効果は最も分かりやすいメリットです。
- 輸送・人件費の削減:汚泥量の減少に伴い、運搬回数の減少や保管容器の削減が可能になります。コンテナやドラム缶の使用本数が減れば、それらのリース費や清掃費も減ります。さらに、廃棄物の運搬や荷役に割く作業時間も短縮できます。例えば当社が支援したケースでは、含水率低減により月20トン出ていた廃棄汚泥を1トン以下に減量できた結果、産廃収集車の手配が月数回から数ヶ月に一度で済むようになり、大幅な運搬コスト・作業工数削減につながりました。
- エネルギーコスト・燃料費の削減:汚泥を自社で焼却処理している場合は、含水率低減によって燃料使用量の低減効果が得られます。また、含水率を下げ汚泥を高カロリー化することで、補助燃料(重油やLPGなど)の使用量を削減できます。仮に含水率85%の汚泥を70%に改善すれば、蒸発させる水分量がおよそ半減するため、投入する燃料も大幅に節約できます。この燃料費削減はそのまま経費削減であると同時に、CO2排出量削減という環境貢献にもなります。最近はカーボンニュートラルの観点からも廃棄物処理過程のエネルギー効率改善が求められており、含水率管理はその重要な取り組みです。
- 廃棄物再資源化による収益化:汚泥の含水率を下げることで、廃棄物を資源に転換できる可能性が生まれます。例えば含水率が低い汚泥は性状が安定するため、セメントクリンカーの原料や道路路盤材として再利用できる場合があります。当社の凝集剤処理では汚泥中の有害物質も不溶化されるため、生成汚泥はセメント原料や土木資材として活用できた事例もあります。また、高熱量(低含水)の汚泥は燃料化しやすくなります。乾燥汚泥を固形燃料(RDFなど)に加工し、自社ボイラーで燃焼利用すれば燃料費削減につながるだけでなく、廃棄物処理費も不要になります。このように廃棄物から価値を生み出す方向にシフトできれば、単なるコスト削減を超えてプラスの収益効果も期待できます。
- その他間接効果:含水率低減は臭気対策や衛生環境改善にも役立ちます。水分の多い汚泥は腐敗しやすく悪臭や腐食の原因となりますが、水分を減らせば腐敗速度が落ち臭気が大幅に軽減します。実際に含水率改善によって作業環境の悪臭問題が解消し、従業員の労働環境が向上した事例もあります。作業環境改善は安全面や従業員満足度向上につながり、間接的な経済効果を生むでしょう。また、汚泥量の削減によって排出事業者としての環境負荷が下がり、企業の環境アピールに繋がるというメリットもあります。ISO14001の監査で高評価を受けたり、地域住民への説明で理解が得られやすくなるなど、定量化しにくい効果も見逃せません。
以上のように、含水率管理は単なるコスト節減策ではなく、廃棄物処理の効率化・環境改善・資源化を含めた総合的なメリットをもたらします。ポイントは、自社のニーズに合った最適な方法で含水率を低減し、その効果を最大限引き出すことです。次章では、こうした含水率改善を実際に実現した当社アクトの技術と導入事例をご紹介します。
アクトの含水率改善実績と導入事例
私たち株式会社アクトは、多くの企業様の含水率低減に取り組んできました。最後に、当社が誇る技術力と実績の一端を紹介いたします。
◎ 無機系凝集剤「水夢(すいむ)」による含水率低減:アクトが開発した凝集剤「水夢」は、汚泥の水分を効率良く固形フロックに取り込み、脱水後の含水率を大幅に下げることができます。主成分は天然鉱物(ゼオライト等)で、安全性に優れるのも特徴です。水夢処理により生成される汚泥フロックは崩れにくく、機械脱水後の水分含有率が約50〜70%程度と低く抑えられます。これは従来のポリマー凝集剤のみの処理よりも格段に乾燥したケーキを得られるレベルです。実際、水夢+簡易圧搾装置の組み合わせで含水率約60%のケーキ化に成功した例もあり、産業廃棄物処分コストを最大70%削減しました。さらに水夢には廃液通の重金属類を不溶化できる品番もあり、性状次第ではセメント原料や路盤材へのリサイクルも可能となります。汚泥の減量だけでなく再資源化まで視野に入れたソリューションとして、多くのお客様に採用いただいています。
◎ 小型凝集沈殿装置「ACT-200」との組み合わせ:当社は薬剤だけでなく機械装置の提供も行っています。例えば小型汚泥処理装置「ACT-200」は、凝集→固液分離→ろ過までを一体化したコンパクトな装置で、1回200リットルの廃水を数十分で処理できます。この装置と水夢を組み合わせたソリューションにより、従来処理が難しかった排水中の特殊な顔料や微粒子を確実に除去し、廃液20トンから脱水ケーキ1トン以下という大幅な減量効果を上げた実績があります。実際の導入事例では、年間処理コスト720万円だった塗料廃水処理が約250万円に減少(約65%コストダウン)し、投資回収期間1.5年という結果を出しました。加えて作業時間も1日3時間から30分に短縮され(約85%削減)、人手不足解消と本来業務への専念に寄与しました。含水率低減が引き出す経済効果を、お客様の現場で具体的な数字として実証しています。
私たちアクトは、単に薬剤や装置を販売するだけでなく、無償サンプルテストや現場試験を通じて最適条件を見極める技術サポートを提供しています。このようなきめ細かな対応力と技術力こそが、他社にはない当社の差別化ポイントです。
含水率の適切な管理は、廃水処理・汚泥処理におけるコスト削減と環境負荷低減の両立に直結する重要テーマです。含水率とは何かという基本から、その測定・低減・最適化まで網羅して解説してきました。ぜひ本記事の内容を参考に、自社の汚泥含水率の見直しや改善に取り組んでみてください。含水率の低減によって「運ぶ水を減らし、捨てるお金を減らす」ことができます。適切な技術導入と管理によって、処理コスト最大70%削減も夢ではありません。私たちアクトは、皆様のコストダウンと環境改善を全力でサポートいたします。含水率対策でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。