工場や施設の排水に混入する「し渣(しさ)」をご存知でしょうか? 排水処理の現場では、髪の毛や紙くず、食べ物のカスなど様々なゴミが混入し、設備の詰まりや悪臭の原因となります。本記事では、し渣の基本定義や発生メカニズムから、効果的な除去方法、適切な処理・処分の手順、さらに処理費用を抑えるテクニックまで、水処理の専門家がわかりやすく解説します。工場や事業所の排水管理担当者必見の内容です。適切なし渣対策を行い、設備の安定稼働とコスト削減を実現しましょう。
し渣の基本定義と発生メカニズム
「し渣」とは何か? し渣(読み方:しさ)とは、排水中に混入する固形状のゴミ全般を指す用語です。具体的には、髪の毛、紙片、繊維くず、食べ物の残渣、ビニール片、木片など水に溶けず沈まない各種のゴミが含まれます。家庭や事業所から流れ込む生活排水・産業排水には思いのほか多くの異物が混じっており、下水処理場でも大量のし渣が回収されています。例えば下水処理場では紙類や髪の毛、布切れ、木片までスクリーン(網)の段階で除去されます。
し渣の発生メカニズムとしては、日常業務や生産工程で生じた固形のゴミが排水経路に流入することで起こります。工場では原料の洗浄時に出るクズ、設備の清掃時に剥がれ落ちた汚れ、作業中に落下した包装材などが排水に混ざり込むことがあります。家庭由来の排水では食べ残しやトイレットペーパー以外の紙類、髪の毛などが代表例です。沈砂(ちんさ)と呼ばれる砂利や土砂は沈殿槽で沈むのに対し、し渣は水中を浮遊・流下しスクリーンで掬い取られる点が特徴です。言い換えれば、重い砂粒は沈んで「沈砂」に、沈まず漂うゴミがスクリーン上に残ったものが「し渣」なのです。し渣は放置すればやがて腐敗し悪臭や衛生問題を引き起こすため、排水処理プロセスの早い段階で確実に除去する必要があります。
し渣の種類と特徴(粗大し渣・細目し渣)
一口にし渣と言っても、その大きさや性質によって「粗大し渣」と「細目し渣」に分類されます。粗大し渣とは比較的大きなゴミのことで、棒状・格子状の荒目スクリーンで捕捉されるサイズのものを指します。具体例としては布切れやビニール片、木片、骨、野菜の切れ端など、数センチ以上の大きさを持つ異物です。これら粗大し渣は排水路に設置されたバースクリーン(鉄格子状のスクリーン)で最初に取り除かれます。固定式の手動スクリーンでは棒の間隔が約25~50mm程度、機械式の自動スクリーンでも20mm前後の目幅で設置し、それ以上の大きな夾雑物をカットします。粗大し渣は目視できるサイズのゴミで、放置するとポンプや配管を即座に詰まらせる恐れがあるため、真っ先に除去すべき対象です。
一方、細目し渣とはより微細なゴミ類を指し、粗目スクリーンを通過した後に細目スクリーン(微細な網や孔)で捕集されるものです。例えば髪の毛や糸くず、紙の繊維片、粉々になった食品カスなど数ミリ以下~数十ミリ程度の粒子状・繊維状のゴミが該当します。通常、排水処理施設では粗目スクリーンで大きなゴミを除去した後、細目スクリーンで小さなゴミを二段階で除去します。細目スクリーンとしては回転式ドラムスクリーンやステップスクリーン、振動スクリーンなどが用いられ、連続的に目詰まりを防ぎながら微細なし渣を回収します。細目し渣は一見水と共に流れてしまいそうな小さな異物ですが、蓄積すると後工程の沈殿槽や配管で堆積・閉塞を引き起こしたり、膜ろ過装置を損傷したりする可能性があります。また微細なし渣ほど含まれる水分が多く粘性が高い傾向があり、処理や脱水にも手間がかかります(し渣の水分含有率は通常約**90%**にも達します)。したがって、細目し渣もしっかり捕らえておくことで、後段の生物処理を安定化させ、全体の処理効率を高めることができるのです。
し渣除去の必要性と放置リスク
し渣を除去せずに放置すると、設備面とコスト面の双方で大きなリスクが発生します。まず設備面では、排水中のし渣がポンプに絡みついたりインペラーに巻き付いたりして機械に過負荷をかけ、最悪の場合故障に至ります。たとえば髪の毛や繊維くずがポンプの羽根に詰まれば性能低下や焼損の原因となりますし、ビニール片や布は撹拌機のプロペラに絡みついて回転を阻害します。搬送スクリュー等に長い繊維質のし渣が巻き付けば部品の破損・摩耗を早めるでしょう。このようにし渣が機器に絡むことで頻繁なトラブル対応や清掃が必要となり、設備停止による生産ロスまで招きかねません。
次にコスト面のリスクです。近年は産業廃棄物処理費用の高騰や処理場の逼迫により、し渣の処分コストも上昇傾向にあります。水分を多く含むまま大量のし渣を廃棄する場合、処理業者への支払い費用(重量単価)がかさみ、企業の負担となります。コスト削減には脱水処理で水分量を減らすことが有効ですが、簡易的に自然脱水させようと放置すると腐敗による悪臭発生など別の問題が生じます。実際、食品工場のスクリーンで捕らえた野菜くずや骨などのし渣をそのままにしておくと短時間で腐敗し強烈な悪臭を放ちます。悪臭は周辺環境への迷惑となるだけでなく、職場環境の悪化や害虫発生の原因にもなり得ます。
さらに、し渣をこまめに除去清掃しないといけない状況は人的コストの増加にもつながります。頻繁な設備清掃やし渣回収作業には人手と時間が取られ、生産性を下げてしまいます。一方で清掃間隔を延ばすと設備故障リスクが上がるため、結局効率的にし渣除去を行わなければならないのです。以上のように、し渣を放置すれば設備故障・悪臭・処理費用増大という三重のリスクが発生します。したがって、排水処理プロセスにおいてし渣の的確な除去は欠かせないステップであり、安定した施設運用とコスト管理のための重要事項なのです。
し渣除去装置の種類と選定方法
し渣を効率よく除去するためには、適切な除去装置(スクリーン類)の導入と選定がポイントになります。一般的に、排水処理設備の前処理段階には粗目スクリーン(バースクリーン)と細目スクリーンを組み合わせて設置します。粗目スクリーンは先述の通り鉄製の格子状フィルタで、大型のゴミを引っ掛けて除去する装置です。小規模施設では人力で定期的にゴミをかき取る手動式もありますが、多くは機械式自動除塵機が使われます。自動除塵機(バースクリーン式)は、コンベアチェーンに等間隔で取り付けた熊手状の「レーキ」が水路を連続的に掻き上げ、スクリーン面に引っかかったし渣を上部まで運搬します。上部にはワイパーが設置され、レーキが掬い上げたし渣をかき取って回収容器へ落とします。これにより人手を介さず連続的に大きなし渣を安定回収できるため、設備の安全運転に欠かせない存在です。
実際の処理現場では、し渣除去用のコンパクトなユニット機器が活用されることもあります。写真はし渣除去機の設置例で、水路に設置したスクリーンとスクリュー式搬送装置、脱水機能を一体化した装置の例です。こうした専用機器はスクリーン処理装置の代替として用いることができ、捕捉したし渣をその場で洗浄・脱水し、袋詰めまで行う機能を備えています。装置内部でし渣の捕捉→高圧水による洗浄→スクリュー圧縮による脱水→排出というプロセスが完結するため、従来のスクリーン+脱水機を別々に設置するよりも省スペースで効率的です。機種にもよりますが、洗浄・脱水の効果でし渣容量を約1/4まで減容できるものもあり、後工程の負荷軽減と処理費用削減に大きく寄与します。
細目スクリーンについては、回転ドラム式やステップ式など様々なタイプがありますが、いずれも微細なし渣を目詰まりなく除去する工夫がなされています。例えば回転ドラムスクリーンでは、円筒状のスクリーン面を回転させながら内部にブラシやスプレー水でセルフクリーニングし、連続的に細かなゴミをろ過・排出します。細目スクリーンの選定では目幅(スクリーン網の開口サイズ)と処理流量が重要な指標です。一般に、後工程に膜ろ過装置など繊細な設備がある場合は1mm以下の微細目スクリーンが推奨されますが、目が細かすぎると処理流量が制限され詰まりやすくなるため、粗・細二段階での設置バランスが大切です。流量が大きい施設ではチャンネル(開水路)に据え付けるタイプを、スペースが限られる場合は密閉型(クローズド型)スクリーンを選ぶなど、設置環境に応じた形式選定も行います。
また、スクリーン以外の除去アプローチとしてし渣破砕機(グラインダー)の利用も考えられます。し渣破砕機とは、排水中のし渣を粉砕して細断する装置で、ゴミを取り除くのではなく細かく砕いてしまう方式です。破砕されたし渣は微小片となって下流へ流れるため直接の除去はできませんが、その代わり撹拌槽やポンプに絡まる大きなし渣自体が存在しなくなるメリットがあります。実際、破砕機でし渣を細断しておけば槽内で絡みつきが起こらなくなり、機械がスムーズに稼働します。清掃作業の頻度も削減でき、設備負荷や故障トラブルの大幅低減につながるため、小規模施設やポンプ保護に重点を置くケースで導入されています。ただし破砕した夾雑物は最終的に汚泥や沈殿物として残るため、破砕後にドラムスクリーン等で微細片を改めて除去する工程を組み込むのが望ましいでしょう。装置選定にあたっては、排水の性質・量、維持管理体制、設置スペース、初期コストなどを総合的に勘案し、専門家の助言のもと最適な機種と組み合わせを決定することが重要です。
し渣処理・処分方法の最適化
スクリーンや除去機器によって回収されたし渣は、そのまま捨てるのではなく適切な処理工程を経て最終処分する必要があります。し渣処理のポイントは、最終的に焼却処分する前に可能な限り量と水分を減らすことです。大量のし渣を未処理のまま焼却炉に投入すれば、それだけ燃焼時間が延びエネルギー消費やCO2排出量も増大し、処理コストも跳ね上がってしまいます。そこで多くの施設では、焼却前にし渣の減量化処理(前処理)を行う5つのステップを踏んでいます。
①沈砂分離・洗浄: まず初めに、し渣に混ざっている砂や泥など重い異物(汚砂)を取り除きます。専用の沈砂池や沈砂洗浄機にし渣混じりの排水を通し、砂利や土砂は沈降させて分離します。沈砂洗浄機では微細な気泡を注入してし渣(ゴミ)だけを浮上させ、一方で重たい砂は高速沈降槽で回収する仕組みになっています。こうして砂分とゴミ分を分けることで、後工程で扱うし渣量を減らすとともに、砂は別途埋立処分など適切に処理します。砂混じりだとし渣の含水率や重量が余計に増えて処理効率が落ちるため、この工程は非常に重要です。
②粗大・細目し渣の回収: 次に、前段で説明した自動除塵機(粗目スクリーン)や細目スクリーンを用いて、大小さまざまなし渣をしっかり回収します。粗大し渣はコンベアで掻き上げられ、細目し渣もドラムスクリーン等で濾し取られます。スクリーンで回収されたし渣はコンテナやホッパに落とされ、一箇所に集められます。この段階ではし渣はまだ水分を多く含み(ドロドロの状態)かつ汚泥成分も付着しています。特に汚泥し渣(し渣に活性汚泥などの泥分が付いたもの)はそのままでは扱いにくく腐敗もしやすいため、次の工程でしっかり洗浄・脱水します。
③し渣の洗浄・脱水: 回収したし渣は、し渣脱水機と呼ばれる装置で水切り処理を行います。スクリュープレス式の脱水機が多く使用されており、らせん状のスクリューコンベアでし渣を圧縮しながら搬送し、水分を絞り出します。この際、し渣に付着した汚泥や有機汚物を水洗する「洗浄工程」を組み込んだ機種(ウォッシャープレス等)もあり、洗浄と脱水を一台でこなすことで臭気低減と効率的な水分除去が可能です。前澤工業製の「ウォッシャープレス」のように、除塵機から直接投入できるコンパクト設計の機器も存在し、スペースの有効活用につながります。脱水工程ではし渣中の水分をできるだけ搾り取ることが肝心です。十分に脱水することで処理後のし渣量(重量)は大幅に減り、後述する処分費用の削減に直結します。なお脱水中に出てきた脱水水(し渣から絞り出された汚水)は再度メインの排水処理系に戻し、循環させます。
④し渣の減量(破砕・減容): 必要に応じて、脱水後のし渣をさらに破砕機で細断したり、圧縮機でプレスして体積を減容する処理を行います特に大容量のし渣が発生する施設では、焼却炉の負荷を下げるために前処理段階で物理的な減量化を図ります。し渣破砕機を用いて繊維質のゴミを裁断すれば、焼却時に燃え残りなく短時間で燃焼させることができます。また圧縮成型して密度を上げれば、輸送時や保管時にかさばらず扱いやすくなります。これらの分解・減容処理によってし渣の体積・質量を大幅に削減できるため、環境面にもコスト面にもメリットがあります。
⑤最終処分(焼却・埋立等): 前処理を経て量が減ったし渣は、最後に焼却処分されます。多くの下水処理場や大規模プラントでは場内に焼却炉を備えており、脱水し渣を定期的に焼却しています。工場や小規模施設の場合は、産業廃棄物(一般廃棄物)として許可業者に収集運搬してもらい、外部の焼却施設で処理するケースが一般的です。焼却によってし渣は灰分だけになり、最終的に埋立処分されます。前段階でし渣の量を十分減らしてあるため、焼却に要する時間・燃料も削減され、CO2排出も抑制されます。結果として、処理コストも必要最低限に抑えることが可能です。
以上がし渣処理の最適プロセスです。まとめると、砂分離→スクリーン除去→洗浄脱水→減量化→焼却処分という手順を踏むことで、効率的かつ衛生的なし渣処理が実現できます。適切な前処理により後工程の負担を軽減し、全体としてムダのないスムーズな処理を目指すことが重要です。
業界別し渣対策のポイント
し渣の発生状況や適切な対策は、業界や施設の種類によっても異なります。ここでは業種別によく見られるし渣の特徴と対策ポイントを紹介します。
- 食品加工・飲料製造業: 食品関連の工場排水には野菜くずや果皮、動物の骨、殻、米粒など有機性の固形物が大量に含まれます。さらに包装材の切れ端やラベル片などプラスチックごみも混入しがちです。この業界ではまず原料段階での異物混入防止(例えば排水口にストレーナー網を設置して大きな残渣を捕集)を徹底し、それでも流れ出た細かなカスをスクリーンで確実に除去することが重要です。油脂を多く扱う工場では、油と一緒に浮上してくる固形物もあるためグリストラップでの油脂分離も併用します。食品残渣は腐敗しやすく悪臭の原因になるため、スクリーンで捕らえたし渣は毎日こまめに除去・清掃し、破砕・石灰散布などで腐敗を抑制しながら処理することがポイントです。
- 繊維・製紙・製造業: 繊維工場や縫製工場では糸くずや布片、綿ホコリなどが排水に混入します。これらは非常に絡まりやすく、撹拌機やポンプへの巻き付き事故を起こしやすいのが特徴です。対策としては、目の荒い粗選別網で布片など大きなものを取り除いた上で、細目スクリーンやフィルタで微細な繊維もキャッチする二段構えが有効です。必要に応じてし渣破砕機を導入し、長い繊維が絡まないよう短く裁断しておくと設備保護に有効でしょう。紙パルプ関係では木片やパルプ繊維がし渣となります。紙繊維は水を含むとヘドロ状になるため、脱水機能付きスクリーンでしっかり水切りし、乾燥重量を減らしてから廃棄するよう留意します。
- 化学・薬品・電子部品業: これらの業界では排水中のし渣は比較的少ない傾向にあります。主成分が溶解性の汚染物質で、固形ゴミは原料包装の切れ端や作業用手袋の破片程度しか出ない場合もあります。しかし微小なプラスチック片や樹脂片が混入すると、後段のイオン交換樹脂や膜装置に目詰まりを起こしかねません。このため、排水入り口に細目のストレーナーやバグフィルターを設置して微粒ゴミをキャッチする対策がとられます。また電子部品工場では洗浄工程から金属微粉や研磨材の粒が出ることがあり、これは沈砂分離で対応します(重い粒子はグリットチャンバーで沈降除去)。固形ゴミが少ないからと油断せず、定期的にスクリーン設備の点検清掃を行って突発的な混入物(破損部品片など)にも備えることが肝要です。
- 公共下水処理場・し尿処理施設: 一般家庭や商業施設から集まる下水では実に多種多様なし渣が流入します。紙おむつ、生理用品、ビニール袋、果ては布団やおもちゃまで、規格外の粗大ゴミが混ざる例も報告されています。下水処理場では頑丈な粗目除じん機を設置し、大型異物を物理的に引き裂きながら除去します。また沈砂池手前にスクリーンを配置し、砂とし渣を同時に捕捉・分離する工夫もされています。し尿処理施設では収集槽に破砕除渣装置を組み込み、し渣を細かく砕いた後にドラムスクリーンで回収するシステムが一般的です。公共インフラでは大量のし渣が日々発生するため、場内焼却炉やメタン化施設で処理されますが、どちらにしても減量・脱水処理が効率の鍵となります。自治体では住民向けに「トイレに流せない物」の啓発も行い、そもそものし渣発生抑制にも努めています。
以上のように、業種ごとに排水中のし渣の内容や量は異なります。それぞれの業界特有のゴミに対応した対策ポイント(異物侵入の抑制、適切なスクリーン選定、補助装置の活用、こまめな清掃など)を押さえることが大切です。貴事業所の業態に合ったし渣対策を講じることで、排水処理設備の安定運用と環境リスク低減を図りましょう。
し渣処理費用の削減テクニック
最後に、し渣処理にかかるコストを抑えるためのポイントをまとめます。し渣処理費用の主な内訳は、産業廃棄物処理委託費(運搬・焼却料)と設備の維持管理費(清掃人件費や修繕費)です。これらを削減するには以下のようなテクニックが有効です。
- 含水率低減による重量削減: 前述のとおり、し渣は水分約90%を含むため、そのままでは非常に重く処理費用が高くつきます。処理費は重量単価で課金されるケースが多いため、脱水機で可能な限り水を絞り出して重量を減らすことが最大のコストダウン策です。高性能なスクリュープレス脱水機や遠心脱水機を導入し、ケーキ状にまで乾燥度を高めてから廃棄すれば、廃棄量を大幅に減らせます。例えば洗浄・脱水一体型の除渣機を使えば、し渣容量を従来の1/4程度まで減らせるため、処理委託費を大きく圧縮できるでしょう。
- 破砕機・自動化による清掃頻度減: し渣破砕機を導入して設備清掃の頻度自体を下げるのも間接的なコスト削減につながります。破砕機でし渣が絡まなくなれば、槽の清掃やポンプ分解の回数が激減し、清掃に割く人件費や設備停止による機会損失が減ります。同様に、自動除塵機やストレーナーの自動洗浄機能(自己洗浄式スクリーン)を活用し、人手によるゴミ掻き揚げ作業を省力化することも有効です。設備に投資して自動化・高性能化を図ることで、長期的な保守コストを削減できます。
- 適切な契約と廃棄物分別: し渣の処分を外部委託する場合、契約内容の見直しや分別工夫でコストダウンできることがあります。例えば脱水後のし渣は「一般廃棄物(可燃ゴミ)」扱いになる場合と「産業廃棄物(汚泥)」扱いになる場合がありますが、自治体や業者によって処理単価が異なります。法令を遵守しつつ安価に処理できる区分で出せるよう調整するとよいでしょう。また、し渣中のプラスチックや金属を分別回収してリサイクルに回せる場合は、廃棄量そのものを減らせます。ただし衛生面の問題もあるため、無理のない範囲で検討します。
- 発生抑制と現場管理: もっとも根本的な対策は、し渣を最初から極力出さないようにすることです。製造工程で出る固形廃棄物は、排水に流さず専用の回収箱に捨てるよう従業員に教育する、床洗浄排水にはストレーナー付き排水口を設置する、など日常の現場管理で異物流出を減らせます。例えば食品工場では野菜くず用のごみ受けを流しに設置し、工場排水へ流れ込む前に捕集するだけでも後工程のし渣量が激減します。「出さない努力」が最良のコスト削減策であることも念頭に置きましょう。
以上のテクニックを組み合わせることで、し渣処理に伴うコスト負担は着実に減らすことができます。特に脱水による重量低減と設備投資による省力化は効果が大きいため、自社の状況に合わせて検討してみてください。費用対効果を試算し、最適な設備導入・運用改善を行うことで、長期的には大幅な経済メリットを享受できるでしょう。
アクトのし渣処理実績について
アクトの凝集剤「水夢(SUIMU)」でも、もちろんし渣の回収が可能です。水夢は水中の粗大し渣も細めし渣もどちらも凝集し、フロックにするので容易にし渣を回収できます。ご興味のある方は、是非サンプルテストをお申込みください。
ご覧いただいたように、し渣とは何かから始まり、その除去・処理・費用対策まで総合的に解説してきました。適切なし渣管理によって設備トラブルのない安定稼働とコスト削減が可能になります。ぜひ本記事の内容を貴社の排水管理にお役立ていただき、困りごと解消の一助となれば幸いです。何かございましたらお気軽にお問い合わせください。