工場や事業所の排水処理設備を管理する担当者にとって、水処理の緊急対応や災害時の復旧は事業継続に直結する重要課題です。地震や豪雨などの自然災害、設備の故障や停電、水質の急変や薬品事故など、水処理現場では様々な緊急事態が起こりえます。万一のトラブルに備えてBCP(事業継続計画)を策定し、応急処置や迅速な復旧手順を整えておくことが、安全確保と環境保全の両面で不可欠です。本ガイドでは、水処理施設の緊急事態の種類と影響、水処理BCP策定のポイント、緊急時の応急処理方法、災害からの復旧手順、日頃からできるトラブル予防策について、分かりやすく解説します。
水処理緊急事態の種類|設備故障・停電・災害・水質異常・薬品事故
水処理プラントが日常通り稼働しているときは意識しにくいものですが、ひとたびトラブルが起これば現場は一瞬で緊迫します。想定される水処理の緊急事態には以下のようなケースがあります。
- 設備の故障:ポンプや処理装置の急な不具合・故障により処理ラインが停止し、排水処理ができない状態になります。機械的トラブルは人為ミスや老朽化など様々な要因で発生し得ますが、完全になくすことは困難です。設備停止によって処理できなくなった排水はタンクから溢れたり、未処理のまま環境へ流出するリスクがあり、生産ラインの停止や周辺環境への影響を招きます。
- 停電:工場全体の停電や装置単独の電源トラブルで、水処理設備がストップするケースです。電力が途絶するとポンプ停止による排水の滞留や、曝気装置の停止による水質悪化(嫌気化や異臭発生)などが起こります。特に長時間の停電では処理プロセス全体が麻痺し、早急な対応が必要です。非常用発電機などのバックアップ電源や、電力復旧までの間排水を一時的に貯留する設備がない場合、早期に排水を外部へ搬出する手配(バキューム車による汲み取り等)を検討しなければなりません。放置すれば操業停止や法令違反による罰則につながるため、停電対策も含めた事前準備が重要です。
- 自然災害:地震・浸水・台風・豪雨などの災害により、水処理施設そのものが被災・破損するケースです。例えば大地震でタンクや配管が破損したり、豪雨で想定外の濁水や土砂が流入して設備が機能不全に陥ることがあります。実際、下水処理場が浸水してポンプが停止した事例も報告されており、災害時には広範囲に複数の設備が影響を受けるため、単一工場では対応しきれない深刻な事態となりえます。災害発生後は被害状況の把握と応急対応に加え、復旧まで長期戦になる可能性もあるため、官民の支援体制や仮設設備の活用も視野に入れた準備が求められます。
- 水質異常:原水や排水の性状が急変し、既存の処理プロセスでは対応できなくなるケースです。例えば工場排水中に通常想定しない高濃度の汚泥や化学物質が混入し、処理能力を大幅に超えてしまう場合が挙げられます。また、排水が放流水の水質基準(BODやSSなど)を満たせない状況に陥ることも緊急事態です。このままでは法令違反となり行政指導・操業停止等のリスクが生じます。原因としては製造工程での誤混入や、設備汚損、前処理工程のトラブルなど様々ですが、発生時には速やかに原因物質の流入を止め、応急的に基準内に水質を改善する措置が必要です。場合によっては一時的に排水を貯留し、専門業者による緊急処理(仮設処理装置や応急薬品の投入)を検討します。
- 薬品事故:水処理プロセスで使用する凝集剤・中和剤・消毒薬などの薬品が流出・漏洩したり、薬品投入のミスによって処理水質に異常が生じるケースです。例えば薬品タンクや配管の破損、誤って過量の薬品を投入した場合などが考えられます。薬品が施設内に漏れ出した場合は作業員の安全確保が最優先で、保護具を着用の上で速やかに漏洩箇所を遮断し、可能であれば中和剤や吸着材で二次被害を防止します。また、処理工程内で薬品添加ミスによりpHや残留塩素濃度が基準から外れた場合には、直ちに異常水の系外排出を止め、必要に応じて新鮮な水での洗浄や正しい薬品の再投入を行います。薬品事故は周囲の人や環境にも影響を及ぼす可能性があるため、状況に応じて消防や自治体への連絡も含めた緊急対応が求められます。
以上のように、水処理における緊急事態には様々な種類があります。どの場合でも共通するのは、「対応が遅れれば生産停止や環境汚染、法令違反など深刻なリスクにつながる」という点です。したがって日頃から最悪の事態を想定し、「すぐに対応できる手段」を用意しておくことが肝要です。
水処理BCPの策定|リスク評価・対応手順・連絡体制・代替手段
上記のような緊急事態に備え、平常時から水処理分野のBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定しておくことが重要です。BCPとは災害や事故が発生した際に事業への影響を最小限に留め、早期に重要業務を復旧させるための計画です。水処理設備に特化したBCPを用意しておけば、緊急時にも慌てず計画に沿って対応することができます。
1. リスク評価: まず、自社の水処理プロセスにおけるリスクを洗い出し、発生確率と影響度を評価します。設備ごとの故障リスク(老朽化したポンプの破損可能性など)、立地特性に応じた自然災害リスク(低地なら浸水、地震多発地域なら耐震性の確認)、使用薬品の危険性(劇物なら漏洩時の影響)などを網羅的に想定します。リスクの優先度付けを行い、クリティカルなシナリオ(例えば「停電で全処理が停止する」「大雨で処理能力超過」など)については、特に詳細な対策を検討します。
2. 対応手順の策定: リスクごとに具体的な対応手順(アクションプラン)を文書化します。例えば「主要ポンプ故障時の手順」として、代替ポンプへの切替やバルブ操作の手順、排水の一時貯留やライン切替方法、専門業者への連絡などを手順書にまとめます。浸水時や地震時の対応では、まず電源遮断や危険物の安全確認、人命の安全確保を優先し、その後排水の流出防止措置を講じる…といった初動対応から復旧までの流れをあらかじめ決めておきます。対応手順書は現場スタッフが緊急時にすぐ参照できるよう備え付け、定期的に更新しましょう。
3. 連絡体制の構築: 緊急時には社内外の迅速な連絡・報告が不可欠です。BCPには緊急連絡網を明記し、誰が何を担当するか(現場担当・設備保全担当・環境担当・経営層・広報など)の役割分担を決めておきます。例えば排水が基準超過となりそうな場合、ただちに工場長や環境管理責任者に報告し、必要に応じて所轄の環境当局にも連絡する手順を定めます。深夜や休日でも連絡が取れるよう、関係者の携帯電話・メールなど複数の手段を準備するとともに、外部協力会社(メンテナンス業者や仮設機材レンタル会社)の緊急連絡先リストも整備します。連絡体制は24時間対応が基本です。いざというとき連絡がつかず初動が遅れることのないよう、定期的に連絡網の訓練や情報更新を行いましょう。
4. 代替手段の用意: 重要設備が停止した場合に備えて代替設備・方法を用意しておくのもBCPのポイントです。例えば非常用発電機の設置や、複数系統のポンプ配備、浄化槽など非常時用の予備処理設備の確保が考えられます。また、近隣に同種の処理施設がある場合は相互融通の協定を結び、緊急時に処理を委託できる体制を作っておくのも有効です。近年では、民間水処理企業と災害時応援協定を締結し、非常時に可搬式の仮設処理装置を優先的に提供してもらう取り組みもあります。実際、下水道事業者が自治体間で仮設浄化槽やポンプ車の応援体制を整えており、東日本大震災や豪雨災害の際に被災地で活躍した例もあります。このように、平時から応急処理の選択肢を確保しておくことが事業継続上極めて重要です。
5. 訓練と見直し: 策定したBCPは、机上の計画に終わらせず訓練で検証することが大切です。年に1回は想定シナリオによる緊急対応訓練(例えば「夜間に設備故障で水質異常発生」の想定で連絡網と初動対応をロールプレイする等)を実施し、手順の不備や連絡漏れがないか確認します。訓練で判明した課題は速やかにBCPに反映し、常に最新・最適な計画にアップデートします。また新たなリスク(新設備の導入や生産物変更等)が生じた場合も、その都度計画を見直してください。
以上のステップを踏んで水処理BCPを策定・運用しておくことで、いざという時の被害を最小限に抑え、法令順守と事業継続の両立が可能となります。平常時の少しの準備が、緊急時には大きな違いを生みます。「備えあれば憂いなし」の精神で、できるところから着手しましょう。
緊急時の応急処理|仮設設備・応急薬品・水質確保・安全管理
実際にトラブルや災害が発生してしまった場合、被害を拡大させないための応急処置(応急対応)を迅速に講じる必要があります。ここでは、水処理現場における代表的な応急対策について、ポイントを解説します。
- 仮設水処理設備の活用: 緊急時に既存設備だけで処理が追いつかない場合、仮設の水処理装置・プラントを現場に導入することが有効です。仮設水処理装置とは、ポンプ・タンク・ろ過装置などを一体化し現地に短期間で設置できる簡易処理システムで、必要な期間だけ稼働させられる柔軟な設備です。最大の強みはその即応性で、専門業者に依頼すれば現地調査・設計から据付・運転開始まで最短数日~1週間程度で完了する場合もあります。実際、ある水処理企業では「最短7日で現場稼働」できる体制を整えており、突発的な濁水の大量発生や既設設備停止時の代替処理において、仮設プラントが現場のピンチを救った事例も報告されています。仮設装置といえども処理性能は常設設備に匹敵し、適切に選定・設計されたプラントなら法令で定められた放流水質基準を十分満たす高度な処理が可能です。例えば高性能な膜処理や高速沈殿技術を備えた装置であれば、濁度やBOD・CODを低く抑えた水を安定供給でき、ある仮設プラントでは独自技術で汚泥発生量と処理コストを90%削減した実績もあります。このように仮設設備は応急処理において強力な選択肢となるため、平時からレンタル会社やメーカーと相談し、自社に適した仮設プラントを確保できるよう準備しておくと安心です。
- 応急薬品による処理: 水質異常や薬品事故への初動対応として、緊急用の薬品を用いた処理も有効です。具体的には、pHの急変に対して中和剤(酸やアルカリ)を投入して適正範囲に戻す、凝集沈殿処理が追いつかない場合に追加の凝集剤を投入して汚濁物質を速やかに沈降させる、といった方法が考えられます。例えば当社アクトが開発した無機凝集剤「水夢(すいむ)」は、有機高分子系では処理が難しい複雑な廃水にも対応できる凝集剤で、重金属を含む排水などの処理にも高い効果を発揮します。実際に国土交通省や農水省から技術認定を受け、福島第一原発の放射能汚染水処理にも採用された実績があり、信頼性の高い薬剤です。このような高性能の凝集剤や、中和剤「融夢(ゆうむ)」のように即効性のある薬品を常備しておくことで、いざという時に水質を基準内に速やかに是正し、違法な排水流出を未然に防ぐことができます。もちろん薬品の取り扱いには最新の注意が必要で、投入量の計算や投入後の経過観察を慎重に行い、安全面にも配慮します。応急薬品はあくまで一時的な措置であり、その場しのぎにならないよう、後続の恒久対策(設備修理等)と併せて実施することが肝要です。
- 水質の確保とモニタリング: 応急処理の実施中も、処理水の水質が基準を満たしているかを常時モニタリングする必要があります。緊急時だからといって不十分な処理水を垂れ流せば環境汚染に直結するため、簡易キットや現場計測器を用いてpH、濁度、残留塩素、COD/BODなどの指標を適宜測定し、基準内に収まっていることを確認します。仮設装置を導入した場合でも、試運転の段階で実際に排水を流して水質分析を行い、凝集剤の種類や注入量、反応時間などを調整して処理水質が規制値をクリアするようセッティングします。例えば凝集沈殿法であれば、撹拌強度や沈殿時間を調整し、必要に応じて試料を採取して外部機関で分析しながら最適条件を詰めます。非常時こそ「確実に処理できる」状態を担保することが重要であり、十分な水質確保ができて初めて本格稼働へ移行します。万一、応急措置によっても基準を満たせない場合には、排水の放流を見合わせて更なる対策(追加装置の投入や専門業者への処理委託等)を講じ、環境への影響を食い止める判断が求められます。
- 安全管理と二次災害防止: 緊急対応時には、作業者や周辺環境の安全確保にも最大限の注意を払います。設備の破損箇所に近づく際はヘルメットや保護メガネ、保護手袋、場合によっては防毒マスクなど適切な個人防護具(PPE)を着用します。薬品漏洩時には換気を行い引火や有毒ガス発生に注意するとともに、周囲に立ち入らせない措置を取ります。また、電気系統のトラブルで漏電の危険がある場合は電源を遮断し、感電防止に努めます。二次災害を防ぐ観点では、応急処置に使用した薬剤や回収した汚泥・汚染水を適切に処分することも重要です。仮設タンクに貯留した汚水は、後日しかるべき処理施設へ搬送し、安全に処理します。さらに、応急対応の最中も記録の管理を忘れず行いましょう。いつ、誰が、どのような措置を取ったかを記録し、写真撮影できる場合は状況を残しておきます。この記録は事後検証や当局への報告に役立つだけでなく、将来の教訓蓄積にもなります。安全第一を心がけ、焦らず確実な応急処置を進めることが、被害の拡大防止と早期復旧への近道です。
災害復旧の手順|被害調査・復旧計画・工事・試運転・正常化
緊急事態の発生直後は応急対応に全力を注ぐ必要がありますが、その後は事業を本格的に再開するための復旧プロセスに移行します。災害や重大トラブルからの復旧作業は、多くの場合以下のステップで進められます。
- 被害状況の調査(初期評価): 事態が落ち着いたら、まず水処理施設全体の被害状況を調査します。どの設備がどの程度損傷しているか、配管の破断や漏水はないか、電気系統や制御系の障害状況、敷地内外への汚染の有無などを総合的に点検します。自然災害であれば構造物の亀裂・傾きや地盤沈下、薬品事故であれば周囲の土壌や排水先(水路など)の汚染状況も確認対象です。必要に応じて設備メーカーや建築の専門家にも加わってもらい、復旧に必要な作業リストを洗い出します。また、この段階で所轄官庁(環境部局や保健所など)への事故報告が法令で義務付けられている場合は、速やかに報告書を提出します。被害調査は安全を確認しつつ慎重に行い、原因分析も並行して実施します。原因究明は再発防止策の検討に不可欠であり、「なぜその被害が生じたのか」「根本原因は何か」を突き止めます。
- 復旧計画の立案: 調査結果に基づき、復旧のための計画(スケジュールと方策)を立てます。どの設備を修理・交換するか、どのくらいの期間で復旧させるか、復旧に必要な部品や業者の手配状況、予算措置などを明確にします。例えば主要ポンプが故障した場合、新品の調達納期によっては臨時でレンタルポンプを一定期間使う計画を立てることもあります。複数の対策を組み合わせて段階的に復旧させる場合(応急復旧から本復旧へ移行する場合)は、その移行条件やタイミングも決めておきます。計画立案時には、並行して事業継続への影響も評価します。復旧までの間に操業をどの程度再開できるか、生産量はどこまで回復させるかといった目標を設定し、重要顧客への説明や代替生産の手配など事業面での対応も含めて総合的にプランニングします。必要ならBCPで想定した優先順位に沿って「まず最低限ここまで稼働させる」というラインを決め、それに対応する応急設備を残しつつ恒久復旧を進めることもあります。
- 復旧工事・修繕作業: 計画がまとまったら、実際の復旧工事に着手します。損傷した機器の交換や配管の修理、電気系統の復旧工事、土木的な復旧(浸水した施設の清掃・消毒、基礎補修など)を順次行います。復旧工事では、安全確保に十分配慮しつつ、可能な限り早期復旧を目指します。ただし急ぐあまり粗雑な修理を行うと後々不具合が再発しかねないため、仮補修で済ませる部分と、本格補修を行う部分を切り分ける判断も重要です。例えば被害が軽微な部分は先に仮復旧して処理能力を部分的にでも回復させ、重大な部分は時間をかけて交換・再施工するといった具合です。工事中は並行して仮設の処理措置(たとえば移動式ポンプや予備配管による迂回)を講じ、復旧作業と最低限の処理継続を両立させる場合もあります。また、工事進捗に応じて関係者への定期報告を行い、周知徹底と情報共有を図ります。
- 試運転と調整: 設備の修繕・交換が完了したら、すぐに本格稼働させる前に試運転(テスト運転)を行います。新たに設置・修理した機器やシステムが正常に機能するか、実際に排水を流しながら確認します。各工程でポンプ圧や流量、電流値、センサー値に異常がないかチェックし、必要に応じて微調整を行います。特に水質面では、処理水をサンプリングして基準値を満たしているか分析し、問題がないことを確認します。例えば、生物処理設備を再起動する場合は微生物が安定するまで時間がかかるため、当初は負荷を徐々に上げながらBOD除去率などのパフォーマンスを検証します。凝集沈殿プロセスで薬剤を変更した場合は、適正投薬量や撹拌条件を再度試験して最適化します。試運転中に不具合が見つかった場合は直ちに運転を止め、再度調整・修理を行います。レンタル会社やメーカーのエンジニアに立ち会ってもらえる場合は協力を仰ぎ、現場の状況に合った設定になるよう専門知見を活用します。十分な試運転期間を経て「確実に正常稼働できる」状態を確認できたら、復旧作業はいよいよ完了です。
- 正常化と再発防止策の実施: 全ての設備が元通り機能し、水処理プロセスが平常運転に復帰したら、復旧の最終段階として正常化の宣言と関係各所への報告を行います。従業員や取引先、行政当局に対し、いつから通常操業に戻ったかを通知し、必要なら水質検査結果などのデータも共有します。忘れてはならないのが今回の教訓を踏まえた再発防止策の実施です。原因が設備起因であれば設計変更や保全強化、人為ミスなら手順書の改善や教育徹底、自然災害ならハード面の耐災害強化やソフト面の防災訓練充実など、再発防止の具体策を講じます。事故対応マニュアルがある場合は今回の対応を振り返って手順の見直しを行い、BCPにも必要に応じて修正を加えます。最後に、一連の復旧対応に尽力したスタッフや協力会社への労いを伝えることも大切です。非常時を乗り越えた経験は組織の財産となります。それを糧に、今後さらに強靭な水処理システムと体制を築いていきましょう。
水処理トラブルの予防対策|定期点検・予備品・訓練・マニュアル
緊急事態や災害から無事復旧しても、そこで気を緩めてはいけません。同じことを繰り返さないよう、平常時からトラブルを予防する対策に取り組むことが肝心です。以下に、日常的に実践できる主な予防策をまとめます。
- 定期点検と保守の徹底: 水処理プラントは24時間365日稼働し続けるものですから、日常のメンテナンスが極めて重要です。設備や機器は定期点検によって劣化や異常の兆候を早期発見し、故障に至る前に手を打ちます。例えばポンプやブロワーは振動・異音・電流値を定期的にチェックし、必要に応じてベアリング交換やオーバーホールを行います。薬品槽や配管は漏れや錆びがないか巡視し、バルブ類の開閉も定期的に動かして固着を防止します。水質計器は定期校正を実施し、正確な測定値を維持します。また、消耗品(フィルターやシール材等)は使用状況に応じた予防保全として早めに交換し、機器の消耗・劣化はメーカー推奨のサイクルで更新します。こうした計画的な保守によって、トラブルの大半は未然に防ぐことが可能です。現場の担当者だけで難しい高度な点検は、装置メーカーやメンテナンス専門会社のサービス(定期点検パックなど)も活用し、網羅的な保全を行いましょう。
- 重要部品・予備機の備蓄: 万一トラブルが起きても迅速に復旧できるよう、主要部品の予備や代替機をあらかじめ用意しておくことも有効です。例えば予備のポンプユニットをストックしておけば、現用ポンプが故障した際にすぐ差し替えてダウンタイムを短縮できます。電装系ではヒューズやセンサー類、制御基板の予備を持っておくと良いでしょう。消耗が早いホース類やパッキン、フィルターなどもストックしておけば交換に時間を取られません。さらに、大型設備については緊急レンタルの当てを付けておくことも大事です(例:汚泥脱水機が故障したらレンタル脱水機で一時対応する等)。予備品管理はコストとの兼ね合いもありますが、「これがないと処理不能になる」というものは可能な範囲で備蓄するのが望ましいでしょう。また在庫品は定期的に点検し、古くなりすぎないようローリングストック方式で更新していきます。予備品のおかげで致命的な停止を防げた例も多く、事業継続の保険と考えて整備してください。
- 操作トレーニングと人為ミス防止: 人的要因によるトラブル(操作ミスや確認漏れ等)を減らすには、日頃の訓練と教育が効果的です。新任者には水処理設備の基本操作から異常時対応まで体系的にトレーニングし、熟練者であっても定期的に手順書を用いた復習や異常シナリオ訓練を行います。設備ごとの標準操作手順(SOP)を整備し、「○○バルブを閉めてから○○ポンプを停止」といった安全に運転停止・開始する手順を周知徹底します。また、交代勤務で引き継ぎミスが起きないよう、運転日誌やチェックリストにより情報共有のルールを徹底します。人為ミスはゼロにできなくとも、複数人確認(ダブルチェック)やアラームの活用など仕組みでカバーすることも大事です。例えば薬品槽の残量低下にアラームを付けておけば、薬品切れによる処理不良を防げます。また、担当者が一人に偏らないよう複数要員を育成し、休暇や緊急時にも対応できるようにします(属人化の排除)。運転管理には設備維持だけでなく作業員の教育も含まれると認識し、継続的なスキルアップを図りましょう。
- マニュアル整備と定期見直し: 緊急時対応マニュアルや日常操作マニュアルを整備し、いざというとき誰でも正しく対応できる仕組みを作ります。マニュアルにはトラブルの兆候、取るべき初動措置、連絡先、応急処置方法、注意点などを分かりやすく記載します。例えば「高い異常音が発生したら→直ちにポンプ停止→予備ポンプ起動→上長へ連絡」というようにフローチャート化すると理解しやすくなります。現場の見やすい場所に掲示したり、小冊子にして携行できるようにするのも良いでしょう。マニュアルは作りっぱなしにせず、設備変更やトラブル事例の発生に応じて定期的に更新します。過去のヒヤリハットや他社事例も盛り込み、「この場合はこう対処する」という知見をアップデートし続けることが大切です。また年1回程度はマニュアルに沿った対応訓練を行い、内容の妥当性を検証します(訓練結果を踏まえ改善)。このような「生きたマニュアル」を維持することで、非常時にも落ち着いて対応できる組織力が養われます。
以上の予防策を地道に積み重ねることで、水処理設備の信頼性は飛躍的に向上します。トラブルそのものを起こさない努力と、万一起きても被害を最小限に留める備えの両輪が、安定した操業と環境保全の鍵となります。ぜひ日々の業務に取り入れてみてください。
私たち株式会社アクトでは、水処理剤・水処理装置のメーカーとして培った技術力を活かし、お客様の緊急対応や災害復旧を全力でサポートしてきました。当社の強みは、薬剤と装置を組み合わせた総合的な水処理ソリューションを提供できる点にあります。無機凝集剤「水夢(すいむ)」やアルカリ中和剤「融夢(ゆうむ)」といった自社開発の水処理薬剤から、小型凝集沈殿装置「ACT-200」に代表される処理装置まで幅広いラインナップを自社で有しており、状況に応じて最適な組み合わせをご提案できます。
当社の技術力と信頼性は、公的機関からの評価や数多くの導入実績にも裏打ちされています。前述の無機凝集剤「水夢」は、有機高分子剤では処理が難しい塗料廃水や重金属含有廃液など複雑な廃水にも適用可能で、液体廃棄物を固形化して処理コストを最大70%削減しうる高度な処理性能を誇ります。その画期的な効果が評価され、国土交通省や農林水産省といった官公庁から技術認定を取得し、福島第一原子力発電所の汚染水処理にも採用されました。また、創業以来340社以上の企業に当社製品・技術をご導入いただいており、官公庁・公共事業への納入実績も多数ございます。これらの数字は、アクトがお客様から寄せられた厚い信頼の証と言えるでしょう。
実際に当社が手掛けた成功事例の一部をご紹介します。当社の凝集剤と処理装置を組み合わせたソリューションにより、ある製造工場では月間20トン発生していた塗料混じりの難処理廃水を1トン以下(約95%の減容化)にまで削減し、年間の処理コストを720万円から250万円へと約65%削減することに成功しました。このケースでは、コンパクトな小型処理装置「ACT-200」と凝集剤「水夢」を現場に導入し、従来は産業廃棄物業者に委託処分していた大量の廃液を、現地で無害化処理してから放流する方式に切り替えました。ACT-200は幅75cm・奥行125cm・高さ180cmほどの省スペースな装置ながら、一度に200リットルの廃液を処理でき、専門知識のないご担当者でも容易に操作できる設計です。キャスター付きで移動も簡単なため、工場内の限られたスペースにも柔軟に設置できました。このようなコンパクト仮設装置を自社開発・提供できることも、他社にはないアクトならではの強みです。
水処理は環境コンプライアンスと事業継続の要であり、いざという時に頼れるパートナーがいるかどうかで明暗が分かれます。「備えあれば憂いなし」です。廃液処理にお困りの際は、ぜひアクトにご相談ください。